【田原】日本の若者も同じ危機感を持っているはずです。そこでTFAの日本版であるTFJの出番ですが、これはもう動いているのですか。
【松田】今年からスタートしたところで、初年度は11人の先生を送り込みました。そこで子どもたちに課題解決する力を……。
【田原】ちょっと待った。課題解決といういい方は難しいよ。いいたいことはわかるけど、課題解決というと、いまの状態を前提として、与えられた問題を解決しながら要領よく生きていくように聞こえてしまう。
【松田】うっ、そうですか。なんといえばいいのか、難しいですね。
【田原】別のいい方をすると、子どもたちに現状を諦めて受け入れさせるのではなく、状況を変えていけるのだという自信を持たせることが大事なんですよ。もっといい、いい方はないかな。
【松田】私が子どもたちによくいうのは、夢は「I can」と「I want」のかけ算だということです。いまの子どもたちは自己肯定感が低くて、「I can」の部分が欠けている。そこを教育でどう補ってあげるかが重要じゃないかと。
【田原】そのほうがまだ僕には伝わるかな。いろいろ話を聞いていると、僕と松田さんの問題意識は非常に近いと思う。だからこそ今日は厳しく話をさせてもらいました。
【松田】ありがとうございます。今日は本当に勉強になりました。これからもビジビシ、指導してください!
田原総一朗が見た松田悠介の素顔
対談前に誤解していたことが1つあった。松田さんがアメリカで出合ったTFAは、全米就職人気ランキングで上位に入っている。それはNPOでの経験で箔をつけて、一流企業に入ろうとする学生が多いからだと思っていた。松田さんに聞くと、たしかにTFAに入る時点では、一流企業に就職するためのステップとして考えている人も多いらしい。しかし、教育の現場を経験するうちに使命感が湧き、7割の人がそのまま現場に残ったり教育関連の仕事に就くという。それを知って、アメリカの若者もやるなと思った。日本とアメリカでは教育システムの違いがあるが、松田さんは同じ仕組みを日本に定着させようと奔走している。ぜひ成功してほしい。
1983年、千葉県生まれ。日本大学文理学部体育学科卒業後、体育科教諭として中学校に勤務。その後、千葉県市川市教育委員会教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院修士課程へ進学。卒業後、外資系コンサルティングファームを経て、Teach For Japan創設代表者として現在に至る。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。