【田原】さらに聞きたい。就労を考えさせるには、どんなやり方がありますか。

【松田】1番いいのは、すでに働いて自分のやりがいを見つけている人たちの話を聞く機会を与えること。つまりロールモデルとの出合いです。

【田原】僕はいま、早稲田で大隈塾というものをやっています。大隈塾は教授の授業がなくて、修羅場を切り抜けた体験のある人間を講師として呼んで、話をしてもらう。松田さんのおっしゃっていることと近いかもしれない。

【松田】そうですね。恵まれた環境で育って成功した人の話を聞かせても、子どもたちのロールモデルにはなりにくい。だから同じ地域の中から、努力してアメリカンドリームをつかんだ人たちを呼んできて話をしてもらいます。

【田原】松田さんは、留学中にTFA創設者の講演を聞いて感動し、その日本版をつくった。TFAはどのような活動をしているのですか。

【松田】優秀な人材を採用して、教育困難校に2年間、教師として送り込みます。私は自分の学校をつくる目的で留学しましたが、もともと胸に秘めていたのは、子どもと向かい合う大人を増やしたいという思いでした。その点、社会全体を巻き込んで活動しているTFAはすごいと素直に感動しました。

【田原】TFAは全米の就職ランキングでも上位に入っています。これが僕にはわからない。どうしてNPOがそんなに人気なのだろう。

【松田】同級生から話を聞いたかぎりでは、社会とか国をよくしていくというところにモチベーションを持っている人が多かったですね。また先生として学校に入り、学校の予算が限られている中で保護者や地域の方々を巻き込みながら課題を解決していく経験が自分を成長させてくれるという人も多い。有名コンサルに入っても最初は指示された分析作業をやるだけですから、それに比べると、ずっと成長しやすいと。