中古車をリサイクルする仕組みが日本国内に必要だ
――家電製品に使われている金などは「都市鉱山」といわれて回収されていますが、自動車の場合はそうではないということですね。
【清水】特にモーターの永久磁石の回収は技術的にも難しい。日本製鉄とかJX金属などが必死に研究しているのですが、回収技術は確立していません。このままでは技術が確立しても、国内に車がない、ということになりかねません。毎年150万台つくっているHVが中古で海外に売られちゃう。行き先はモンゴルが多く、第一世代のプリウスもたくさん走っています。
――レアアースの回収技術が確立されていないとなると、モンゴルで走っている中古車は、最後は捨てられるだけですね。それではもったいないですね。
【清水】国内に静脈のバリューチェーンをつくれていないことが大問題です。年間何百万台も車をつくっているのに動脈のことばかり考えてきた結果です。
――産業界はSDGs(持続可能な開発目標)を実現しようと言ってはいますが、まだまだですね。
【清水】すでにお話ししましたが〈インタビュー(上)参照〉、カーボンニュートラルの視点で考えていたら見えてこないことがあるのです。SDGsの視点で考えると、大量消費社会から脱却して循環型社会にしていかなきゃいけないのです。
「エンジン vs. EV」で考えるのは時代遅れ
――車が電動化していくというのは化石燃料を燃やしておしまいのワンウエイの内燃機関から、再生可能な電気エネルギーを使って、車を動かす循環型のEVに進化すると認識するべきですね。そう考えると大量生産・大量販売モデルから循環型モデルに転換できるのではないかと思います。いつまでも内燃機関にこだわっていると循環型社会にはシフトできないのではないかと思いますが。
【清水】世界の人口は70億人を超えました。こんなに人口が増えなければ、化石燃料を燃やしても世界の人口を養えると思います。しかし、このまま行くと人口は100億人になり、車は25億台ぐらいに増える。そのとき宇宙船、地球号は持たなくなる。洞窟の中で火を焚いて生きていたホモサピエンスと同じままでは、もう生きていけません。僕の口から言いにくいことではありますが、内燃機関の進化はそろそろ厳しくなりそうです。ただ航空機など電気で飛ばすことができないような乗り物はe-fuel(合成燃料)を燃やして飛ぶ必要はあると思いますが。
――「内燃機関は敵ではない」という言葉を自動車メーカーの人からよく聞きます。その度に、誰もこれまで「敵」とは言っていないと反論したくなります。これまで100年間は、人類の暮らしのためには必要な仕組みだったのですが、これから先を睨むと電気にそろそろその座を譲っていっていいのではないか、と言っているだけなのですが。
【清水】「エンジン vs. EV」「EV vs. HV」といった二項対立の形で、メディアではよく議論されます。内燃機関は敵じゃない、という言葉も二項対立を煽っているように思いますが、そろそろ二項対立で物事を考えるのではなく、持続可能性を目指してどのような仕組みがいいのかを考えなければいけないところに来ていると思います。


