こうして“中国製”に置き換えられた
電子レンジのときは基本原理がシンプルですから日本の家電メーカーも後追いで製品開発をしやすかったのですが、ルンバの場合は人工知能ですからそうはいきません。
パナソニックにしても日立も東芝もサンヨーもそのような軍事技術に追いつく後追い製品の開発は容易ではなかった様子です。
結局、ルンバの発売後、類似製品は家電量販店の店頭に並んではいたのですが、本家のルンバが圧倒的なシェアを維持することができたのです。
そして2010年代です。
日本の家電メーカーがつぎつぎと凋落し、時代はアジアに移り、ロボット掃除機の分野では中国メーカーが台頭します。人民解放軍の技術が高度だったのか、それともその時代にはAI開発が進歩していたのかわかりませんが、中国製の性能は十分に高いと市場で評価されます。
さらに競合商品でも「濡れ雑巾で吹き掃除をするような機能」や、「ちょっとした段差なら乗り越える機能」「AIカメラで室内の障害物を把握して回避する機能」などの便利さで、本家を上回る製品も出てきます。
これは1990年代に日本製がアメリカ製を駆逐したときと同じ経済原理で、結局のところあとから出たコストが安く性能がいいメイドインチャイナがルンバのシェアを奪う事態に発展したのです。
では連邦破産法を申請した後、これからのルンバはどうなるのでしょうか?
「1位に返り咲く」と言える理由
未来予測が得意な経済評論家として予言させていただくと、日本のテレビ業界での東芝のような状況が生まれるでしょう。
今、日本のテレビ販売でのシェアトップはソニーのブラビアでもパナソニックのビエラでもなくレグザ、つまり旧東芝です。2位はシャープで、3位と4位に中国のハイセンスとTCLがランクインします。5位がソニーです。
このランキングをみるとなかなか日本もやるなと思うかもしれません。しかし東芝はテレビ事業については中国のハイセンスに売却しています。シャープも台湾の鴻海の子会社です。ですから日本でのテレビのシェアは1位から順に中国、台湾、中国、中国、日本の順になっているのです。
一方で消費者はブランドと価格を見て判断します。
ですから日本市場ではハイセンスやTCLよりもレグザやシャープが有利になるわけです。そして今後のロボット掃除機市場もこれと同じ構造になることが予測できます。
つまり中国企業の傘下に入ったルンバが、コストでは中国と同じレベルに競争力が高まり、ブランド力ではそれ以上の存在になります。結果としてアメリカでも日本でもロボット掃除機市場ではルンバが1位という未来がやってくることが予想できるのです。
さて、ここからはもうひとつの問いを検証します。
ルンバにはもっと良い未来がなかったのでしょうか?

