なぜ山内氏(42)を「2代目」に選んだのか
――今後のサイバーエージェントをどのように成長させていくのか。山内氏の担う役割についてどう考えていますか。
【藤田】山内に決まった大きな要因の一つには、現在のアニメやゲームといった「IP(知的財産)領域」を担ってきた彼の経験がありました。これからのサイバーエージェントの成長戦略を描く上で、IPビジネスは中心的な役割を果たします。世界で戦えるコンテンツを作り、海外で成功させる。それが次の10年の勝負所でしょう。
エンターテインメントの世界、特にグローバル市場においては「資金力」がそのまま競争力になります。ハリウッド映画を見ればわかるように、莫大な資金を持つところが傑作を作り、それがヒットしてさらに巨額の富を生み出し、また次の投資へと回る。『ウマ娘』のような大ヒットを生み出し続け、そのIPを海外にも展開していくことで、私たちもそのサイクルに入り込まなければなりません。
60歳、70歳と社長を続けるのは自分にとっては「ズルいこと」
――現在、藤田さんは52歳です。「若さ」にこだわる理由は?
【藤田】「40代の山内が社長になり、50代前半の藤田が会長になるなんて早すぎる」。そう言われることもあります。しかし、サイバーエージェントにとって「若さ」はアイデンティティそのものだという思いが私にはあります。
私がこの会社を作ったのは24歳の時でした。26歳で当時の最年少記録で上場し、若い才能が躍動できる場所として成長してきた。優秀な若者がなぜサイバーエージェントを選んでくれるのか。それは「この会社であれば若くしてチャンスを掴める」「実力次第でどこまでも上がっていける」という希望があるからです。彼らがそうした夢を見られる環境を守り続けることは、この会社の経営者の責務です。
それなのに、トップがいつまでも居座り続け、60歳、70歳になっても社長の座にいたらどうでしょう。「若手の抜擢」を掲げながら、一番上が詰まっている。そして入れ替えるのは自分以外の他の役員。そんな会社に説得力はありません。
もちろん、私がこのまま社長を続け、気心の知れたベテラン幹部で脇を固めれば、経営は安定するかもしれません。業績も大きく崩れることはないと思います。しかし、それは「未来の利益の先食い」です。今の安定と引き換えに、将来の成長の芽を摘んでしまう。私にとってはそれは「ズルいこと」だと感じます。自分たちの時代を謳歌するだけ謳歌して、後は野となれ山となれ、というような無責任なことはできない。だからこそ、私自身が身を引くことで、「キープヤング」の姿勢を示したかったわけです。

