どちらかが辞めない限り続くストレス
こんにちは、産業医の武神です。1年を通じて産業医面談の中でよく持ち上がってくる課題が、上司へのストレスに関するものです。
「あの顔を見ると憂鬱になる」「上司とはウマが合わない」「仕事の意欲が削がれる」といった訴えを私は年中聞いています。明らかなハラスメントはなく、マネジメント上の問題もないにもかかわらず、相性が合わなくてストレスを訴えるケースが多いです。これは、非常にやっかいな問題です。なぜなら、このストレスは上手に対処しないと、どちらかが辞めない限り続く、終わりの見えないストレスになりかねないからです。
今月はこのようなとき、上司・部下間の相性問題を乗り越えるために、私がどのようなスタンスで産業医面談をしているかご紹介させていただきます。あなたのお役に立てば幸いです。
「上司のせいで自分のパフォーマンスが出せない」
私のクライアントでいきなり適応障害の診断書を提出して休職に入ったのは、30歳の男性社員Aさんでした。休職開始後初めての産業医面談で彼は、この1カ月間、不安とパニック症状と不眠があったことを教えてくれました。
Aさんは、4年前に入社、2年前に部署異動、半年前から今の上司の下で働いているとのことでした。面談中、通院状況や内服薬等を確認しようとする私の質問には答えず、「上司のせいで自分のパフォーマンスを示せていない」「もう(あの上司とは)同じチームには戻れない」、「社内異動したい」と彼は訴え続けました。
Aさんによると、彼はハイパフォーマーで実力が認められての異動だったが、異動後しばらくは新しい部署、メンバーに慣れることができずストレスがあった。その中でも頑張り、だんだん慣れてきたところ、今の上司がきて、ストレスが一気に増えた。上司の上司に相談したものの、異動はさせてもらえず、ストレス状況が悪化したとのことでした。
「上司の指示は戦略的におかしいことが多く、自分がいつも正しいことを言うので上司に目の敵にされている。今は上司がストレスなだけでなく、上司から与えられる業務も全てストレスに感じる。仕事が楽しくない」と語ります。
次第に朝の不安、会社での過呼吸等の症状が出始め、睡眠は悪化、この3週間はほとんど眠れなくなり、心療内科を受診したところ、適応障害で休職との診断書が出た。内服薬はないとのことでした。

