学歴詐称問題には「何度聞かれも答えない」
今年を代表する話題の一つとなった伊東市・田久保前市長の学歴詐称問題。辞職勧告を発した市議会を解散したものの、新たに選ばれた新議会からも不信任決議を受け、失職した田久保氏は、11月19日、後任の伊東市長選への出馬表明会見を行いました。筆者が会見の模様を最後まで見て、覚えた違和感があります。
出馬会見に臨んだ田久保前市長ですが、メディアから激しい追及を受けていたころとはうって変わり、はつらつとした表情で、とうとうと伊東市長選への意気込みを語っているように見えました。
特に会見で強調していたように感じたのは、市政の継続という政策指針だと思います。不本意な失職を余儀なくされたことで、自らが目指す姿勢実現に再度取り組みたいという発言が何度もありました。
そもそも失職の原因となった学歴詐称問題については、意外なほど記者からの追求がほとんど無かったように思います。学歴詐称問題に関する数少ない質問には、「捜査中なので答えられない」という一言でつっぱね、「何度聞かれも答えない」という姿勢を通しました。
質疑応答に覚えた違和感
学歴詐称問題が日本中から注目され、連日メディアからの取材を受けてものらりくらりと話をはぐらかすような回答しかしなかった時の姿は、鋼の心臓、無敵メンタルなどとも呼ばれたように、批判を受け流す力において長けていたことは確かでしょう。
今回は一候補者としての出馬会見であるため、市長選への意気込みを語る以外、特に学歴詐称問題は回答拒絶を貫くことができるということも、この日の堂々たる態度とリンクしていたかもしれません。
19日は田久保氏による出馬会見であって、自身の言いたいことを並べるのはむしろ当然です。違和感があったのは、その出馬表明スピーチ後の質疑応答でした。
市長選についての会見ということで、質問のほとんどは当選後の市政に関するものでした。市長在職期間が短かったために実現できなかったことや、再選されたら何をしたいのかといった、市行政への展望中心に質疑応答は進みました。
数少ない学歴詐称問題に関する質問は、田久保氏の拒絶によってしつこく追及されることはなかったと思います。手を変え品を変え、聞かれていたのは新市政に関する質問であり、それは田久保氏出馬スピーチの延長線上にあることから、田久保氏の主張を後押しするかのような違和感を覚えました。

