大型案件を受注するのに重要な要素は何か。法人営業一筋20年の杉本浩一さんは「組織といえど、その決定は非合理なことが多い。社長の決裁でさえ覆ることがある。重要な提案をする際は社内のキーパーソンを複数探し出しておく必要がある」という――。

※本稿は、noteに発表した記事「営業一筋20年の私が考える『エンタープライズセールス』において大切なこと」を再編集したものです。

組織の決断は非合理なもの

人間は非合理な存在であり、そういう人間の集合体である大企業の組織も、やはり非合理である、と私は思います。

合理的な決断に見えても、裏側は非合理だったりする。例えば「多数決で決めましょう」というときも、実はみんな長いものに巻かれたいだけだったりします。派閥の論理があったりもします。「本当にその選択が正しいか」よりも「誰の意見に乗っかると自分は得だろうか?」と考えるわけです。

これは当然の帰結です。

人間はそもそも1人では生きられません。ベースは、協力しあうことが必須の「社会的」な生き物。会社という社会の中で嫌われてしまったら自らの身が危ない。だから強い人の意見に乗っかる。

それはそういうものです。

日産とホンダの経営統合が破談になったことがありました。外から客観的に見れば、経営統合したほうが合理的なのかもしれません。でも、人間はだいたい客観的になれないものです。特に社内にいると「会社がすべて」になっていく。

「日産」という名前があって、歴史がある。それまでずっと献身的にやってきた人たちがいるわけです。「ここで経営統合することは自分たちがやってきたことに対する否定になる」。そう考える人が多ければ、その意見を汲み上げるのは自然なことでしょう。

エンタープライズセールスをやっていくうえで「組織はそういう力学で動いている」ということをまず知っておくことは大切です。

会議室
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意外にマイノリティーが組織を動かしている

「長いものに巻かれる」という力学からすると、あらゆることがマジョリティーに寄っていくのが必然です。

ただ面白いのは、全員がそうではないということです。

会社の中にはマイノリティーがいます。そして意外とこういうマイノリティーの人たちが、社内の案件を動かしていたりするのです。たまに窓際社員からイノベーションが生まれる、といった事例を見かけますが、そういうことが大企業の動きを見ていると現にあります。

普通は「長いものには巻かれろ」の力学で会社は動きます。なぜかというと、一人ひとりの人間がそこで生き残ろうとするから。もっと言えば出世したいからです。その一方でそれに反発するタイプの人たちも存在します。彼ら彼女らは「組織の論理」というよりも「現場第一主義」「顧客第一主義」で動くような人です。

そして、この「長いものに巻かれて出世していったマジョリティー」と「現場第一主義のようなマイノリティー」が一緒になると物事が動きます。