早まって後悔する人が10人に1人はいる
白内障手術は、決して軽く考えるべきものではありません。一度手術をして水晶体を取ってしまうと、生まれ持った目の状態には戻せません。チャンスは一回のみ。早すぎる手術や医師任せのレンズ選択は後悔のもととなります。あくまで私の体感ですが、必要がないのに医師にすすめられるがまま手術を受けて、「早まってしまった」と後悔している人がおよそ10人に1人はいます。
白内障とは、目の中のレンズの役割を果たす「水晶体」が濁ってしまう病気です。視界がかすむ、ぼやける、光がまぶしく感じられるといった症状が出ます。加齢によるものがほとんどで、50代で約4割、60代では7割以上の方が発症するといわれます。
手術では、濁った水晶体を除去し、その代わりに人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入します。多くの場合は日帰りで行われ、手術時間は10〜20分程度。痛みもほとんどありません。
手術方法には大きく分けて、超音波で水晶体を砕いて吸引する方法(超音波水晶体乳化吸引術)と、レーザーを用いる方法(フェムトセカンドレーザー白内障手術)の2種類があります。前者は一般的に行われている保険適用の手術で、多くの実績があります。後者はレーザーを用いて水晶体を正確に切開するため、手術の精度が高いというメリットがあります。とりわけ症状が進行した白内障の人や、目に構造的な弱さがある人にとっては、より安全性の高い手術です。ただし、保険が適用されず高額なので、日本ではまだ一般的な選択肢とはいえません。
現在、国内では年間160万件以上の白内障手術が行われています。その中で合併症が起こる確率は数千分の1と、非常に低いとされています。技術の進歩により安全性が高まってきて、多くの患者さんが快適な見え方を取り戻しています。しかし、その一方で、白内障手術は「医師側のリスクが少ない」というのも大きな特徴です。そのため患者さん一人ひとりにきちんと向き合わず、利益を優先し、効率よく大量に手術をこなそうとするクリニックが増えているのも事実です。
実際にはほとんど白内障が進行していないにもかかわらず、医師が安易に手術をすすめてしまうケースは珍しくありません。実は、白内障と老眼の症状はよく似ています。そのため、「最近、どうも見えにくい」「目が疲れやすい」と感じてクリニックに行くと、医師から「白内障ですね」と決めつけられ、早すぎる手術に踏み切ってしまうことがあるのです。
後ほどご紹介する「老視矯正レンズ」を使えば術後は老眼鏡がいらなくなりますから、「老眼も治るなら早めに受けておこう」と軽い気持ちで手術を考える患者さんも増えています。
持って生まれた目とは別の見え方に変わる
まず知っておいてほしいのは、人工レンズ越しの見え方は、生まれ持った目の見え方とは違う、ということです。私たちの脳は、子どもの頃から何十年もかけてその見え方に馴染んできました。その馴染みのある見え方と100%同じように見せてくれるレンズは、この世には存在しません。濁りのないナチュラルな水晶体の光の曲がり方を、人工のレンズで完全に再現することはできないからです。
字ははっきり読めるし、視力もよくなった。けれど、「もともとの目のほうが見やすい」「見え方が自然ではない」という違和感が残る人もいます。わかりやすくたとえるなら、窓ガラス越しに見える外の景色と、窓ガラスのない景色は違って見えるのと同じです。
この「自然な見え方」とのギャップが、術後の不調につながるケースもあります。私を訪ねてきたある患者さんは、手術を受けたクリニックで不調を訴えたのに、「手術は成功しているし、視力も問題ないから文句を言われても困る」と突き放されてしまったそうです。自分自身の選択だったとはいえ、その結果に苦しみ、落ち込む患者さんの声も聞こえてきています。
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