男性が高齢で骨折すると死亡率が女性の3~4倍
骨粗鬆症(骨粗しょう症)は「死なない病気」だからと軽視されています。骨粗しょう症検診の受診率は今のところわずか5%ですが、私たち医師は、これを100%近くまで高めなければいけないと考えています。骨の強さは、いのちに直結するからです。
年をとってからの骨折は、寝たきりや要介護状態を招き、健康寿命を大きく縮めます。それなのに、自分の骨の状態を気にかけていない人があまりにも多い。骨粗しょう症に関しては、この15年ほどで次々と新事実が明らかになってきました。世の中の常識もアップデートが必要です。
長い間、骨粗しょう症というと「60代以上の女性は要注意」と言われてきましたが、決して女性だけの病気ではありません。治療のガイドラインを見ても、女性がなる「閉経後骨粗しょう症」と、「男性骨粗しょう症」の2種類があると明記されています。男性が高齢で骨折すると、女性より3〜4倍も死亡率が高いという報告もあります。
骨粗しょう症で最も多いのは、背骨の骨折です。骨折と聞くと、骨がポキッと折れるイメージが浮かぶかもしれません。しかし、背骨の骨折は、骨がもろくなったことによって、じわじわと潰れるように症状が進行します。恐ろしいのは、背骨を骨折しても、10人中6人は痛みを感じないということです。転んで尻もちをついたり手をついたりして激痛が走る骨折とは違うのです。骨粗しょう症の治療に携わる医師たちは、こうした背骨の圧迫骨折を「いつのまにか骨折」と呼んで、警鐘を鳴らしています。
「いつのまにか骨折」を起こした人は、その後1年以内に、背骨の他の箇所や、足の付け根の骨折を起こすリスクが、背骨の骨折がない人に比べて有意に高いことがわかっています。激しい衝撃を受けたわけでもないのに背骨が折れたということは、骨粗しょう症で全身の骨がボロボロになっているというサインです。
寝たきりになるわけでもなく、いつも通りの生活を送っている。ひどい痛みはないので、整形外科にも行かない。しかし、気づけばドミノ倒しのように体のあちこちの骨が折れ、やがて入院することに――。このように、「いつのまにか骨折」を放置すると、「ドミノ骨折」が起こり、寿命が縮んでしまいます。もし75歳以上で大腿骨近位部骨折(太ももの付け根付近の骨折)を起こすと、8割近くの人は5年以内に亡くなってしまうという報告もあるのです。
さらに、骨粗しょう症で骨折するということは、骨だけでなく、血管や他の臓器の老化が進んでいる可能性も示しています。「いつのまにか骨折」に気づかず、治療をしなければ、死亡リスクは健康な人の7〜8倍まで高まるという研究結果も出ています。
幸い、「いつのまにか骨折」には兆候があります。「背中が曲がってきた」「若い頃と比べて身長が3センチメートル以上縮んだ」「背中や腰が痛む」のうちどれかに当てはまる場合は、骨粗しょう症外来を標榜しているクリニックで背骨のレントゲンを撮ってもらうことをおすすめします。
生活習慣病の人は骨粗しょう症予備軍
骨折を予防するためには骨密度検査を受けることが大切ですが、骨密度さえ高ければいいわけではありません。かつてはカルシウムの値を示す骨密度だけが骨の強さを表す指標とされていましたが、私が2010年に発表した論文でこの通説は覆されました。コラーゲンの量と質を示す「骨質」が、もうひとつの重要な指標だと今では世界中が認めています。
骨は、鉄筋コンクリートの建物に似ています。コンクリートに相当するのがカルシウムで、棒状の鉄筋はコラーゲンに当たります。通常、鉄筋コンクリート製の建物は大きな地震がきても簡単には崩れ落ちませんが、これは鉄筋がしなって、地震の衝撃を吸収してくれるおかげです。骨も同様で、コラーゲンの分子が粘りながらカルシウムなどのミネラル成分と強くつながり合うことで、骨の強度を保っています。
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