物価高の影響で魚介類を食卓に出すコストは上昇している。元水産庁職員の上田勝彦さんは「独特の臭みがあったり調理が難しいといった魚は敬遠されるが、工夫次第でおいしく食べられるものも多い。人気魚種と比べると価格もお手ごろだ」という。ライターの大宮さんが取材した――。

年間100万トンの新鮮な魚介類が廃棄されている

未利用魚、という言葉を聞いたことがある人は少なくないと思う。その魚を美味しく調理して食べている地域もあるので正確には「低利用魚」と言うべきだが、漁獲や流通の過程で「売りにくい魚」として廃棄されてしまうケースが少なくない。

FAO(国際連合食糧農業機関)が2020年に出した報告書では、世界の大半の地域では全漁獲量の約30~35%が廃棄されている。日本の漁獲量で換算すると、およそ100万トンもの食べられる魚介類が活用されずに捨てられている計算になる。

引きずられて弱った魚が海に戻される…

愛知県の三河湾沿いに住んでいる筆者は毎年、底引き網漁の船に乗せてもらっている。鉄製の枠が付いた大きな網を海に落としてしばらく引きずると、狙いのワタリガニやエビ類、貝類が網の中に入る。同時に、海底に棲む小魚もたくさん獲れる。

メゴチ、ハゼ、キス、カレイ……。どれもさばいて調理すれば美味しいのだけど、数とサイズが揃わないと売りにくいのだろう。海に戻されがちだ。しかし、引きずられて弱ったり死んでしまっていることが多い。戻すというよりも捨てるという感覚になる。

岩場に棲む雑食性の魚であるタカノハダイ
筆者撮影
岩場に棲む雑食性の魚であるタカノハダイ。漁場や食べている餌、鮮度によっては強く臭うことがあり、市場では不人気。いわゆる低利用魚だ

漁師が悪いのではない。せっかくの海の恵みはすべて丸ごと味わうという姿勢と知識が消費者にあれば、漁師はちゃんと寄り分けて港に持ち帰ってくれる。

ちなみに筆者はご近所20世帯ぐらいに声をかけて協同購入の仕組みを作っている。地元の漁師や仲買人から低利用魚を中心に多めに仕入れて、さばき、分配するのは筆者の役割。ご近所付き合いと魚さばきが趣味なので毎回楽しいし、仕入れの半量は我が家が無料で食べられる値付け(仕入れ価格の2倍。それでも十分安いが)で分配するので経済的なメリットもある。魚市場通いや釣りが好きな人には真似できる仕組みだと思うので、ぜひ参考にしてほしい。