やるべきことがあるのに、別の作業に手を出してしまうのはなぜか。千葉大学大学院人文科学研究院教授の一川誠さんは「人間は『すぐ終わりそう』と感じたことに、つい手を伸ばしてしまう習性がある。現実逃避のクセを断ち切るには自分の行動パターンを意識しよう」という――。(第2回)

※本稿は、一川誠『ぼくら大切なことに使える時間はもう、あまりないから』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

ラップトップで作業しながら、整理された書類の束をペンで持ちながらマルチタスクをしている女性
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優先順位の低いタスクは潔く捨てる

自分にとって大切な時間を選び、詰め込みすぎを解消するには、自分がやることの優先順位をつけることが必要です。このときの考え方のポイントは、「トップから考えるのではなく、下位のほうから決めていく」ということです。

もっとも優先度の高い「必ずやりたいこと」「自分にとって重要なこと」を最初に考えようとするのは、ハードルが高く、手間や時間がかかります。それよりも、やりたいことが10個あるとすれば、下位の9、10位あたりのことから削っていくほうが取りかかりやすいです。

ピックアップする分野や順番はバラバラでも構いません。仕事・家庭・個人の趣味等、思いつくままに書いてみます。たとえば10個書き出してみると、自分が今どんなことに関心をもち、何を課題と考えているのかが少し見えてくると思います。

それに対して、今の時点の優先順位をつけていきます。具体的に何番目か判断がつかないものは保留で大丈夫です。

すると、「これは自分がやらなくてもいいかな」「自分がしなければ他の人がするだろうな」と感じるものが見えてきます。そうしたもののうち、特に優先順位の低いものがあることでしょう。まずはそれを削ってください。

なぜ人はやらなくていいことに手を出すのか

たとえば図表1の例2では、「飲み会の幹事」と「大掃除」が必要ではないと判断しました。これでやることが2つ減り、8個になりました。

削った分の時間は新たな余裕時間になるでしょう。その時間を、より優先順位の高いことをする時間に割り当ててもいいですし、「自分が何をしたいのかじっくりと考える時間」にあててもいいと思います。

大切なのは「やらないより、やったほうがまし」という程度のことは、自分の時間を使ってまでやらなくていいことであると意識することです。

このあとお話ししますが、私たちは、つい「自分がやらなくてもいいこと」をやってしまいます。ですから、他の人でも十分に対応できることや、なんとなくでやっていることは自分でやる必要はないと意識し、この判断を自分自身に定着させていってください。

そもそも私たちはなぜ、「やらなくてもいいこと」や「やらないより、やったほうがまし」程度のことまで、つい手を出してしまうのでしょうか。その理由には、大きく2つの要素があります。