10人に1人。これが逆流性食道炎の患者数である。食道に炎症が見られないまでも胸焼けなどの症状で悩んでいる胃食道逆流症はその倍はいるという。食生活の変化により、逆流性食道炎の患者は増える傾向にある。今や国民病といっていいこの病気に困っている人のために、大阪の千船病院が立ち上げた『逆流性食道炎 診断・治療センター』の様子をリポートする――。

※本稿は、千船病院広報誌『虹くじら 05号』の一部を再編集したものです。

「口の中がすっぱくなる・胸やけ」の症状はこれを疑うべき

千船病院 逆流性食道炎 診断・治療センター 北浜誠一
千船病院 逆流性食道炎 診断・治療センター 北浜誠一

咳が止まらない。喘息を疑い、アレルギー検査を受けたが、異常はみられない。内視鏡で胃や食道を調べたがやはり問題は見つからない。漢方薬を処方されたが効果はなく、抗不安薬を処方される。これで良くならなければ、次は精神科に行ったほうがいいと医師から言われた――。

こんなふうに困り切った表情の患者が千船病院の逆流性食道炎 診断・治療センターの北浜 誠一のところに来たことがある。

「検査をしてみると咳の原因は胃液の逆流でした。手術をすると咳はピタっと止まりました」

北浜によると逆流性食道炎の有病率は約10パーセント、胸焼けなどの自覚症状がある胃食道逆流症(GERD)の潜在的患者は倍以上だという。

我々が咀嚼した食べ物は、喉の下に位置する上部食道括約筋を通って、食道に入る。食道は直径約2~3センチ、厚さ約4ミリ、長さ25センチほどの管状の臓器だ。食道はぜん動と呼ばれる筋肉の収縮で食べ物を下に送る。下部食道括約筋、横隔膜の穴を通って胃の中に入る。

我々の身体には「二重の門番」がいると北浜は表現する。

「1つ目の門番は下部食道括約筋。ふだんはしっかり閉じていて、食べ物を飲み込んだときだけ開きます。2つ目は“横隔膜脚”という筋肉で、食道裂孔のまわりを支え、括約筋の補助をしています」

胃食道逆流症とは、この門番の力が弱まり、胃の内容物が戻ってしまう状態だ。胃酸があがり口の中がすっぱくなる・胸やけなどの症状がある。胃食道逆流症のうち、食道に炎症が起きているのが、逆流性食道炎である。

「原因は様々です。肥満、過食、加齢、体質などです」