そして、人間形成にとって重要な初等教育を、いい環境で受けるメリットは大きい。いま首都圏の公立小では、大量退職した団塊世代に代わり多くの新人教師が現場に立つ。新人教師の大半は子供をコントロールできず学級崩壊になることも多い。私語が飛び交う環境に慣れた子供は、それが普通と勘違いしたまま育ちかねない。力のある教師が多い私立小では、このような混乱は起きづらい。いまの首都圏に限れば、たとえ五流の私立小でも、公立小は避けて、そちらに子供を入れるべきだ。
様々な家庭環境の生徒が通う公立小で過ごしたほうがたくましく育つ、という意見もある。しかし自我が確立していない小学生のうちは、悪さをする友達の影響をマトモに受け、自身が悪に染まるリスクは無視できない。
その点、名門私立小の人間形成の工夫は徹底している。玉川学園小学校課程の1年生は月齢別クラス。一般に早生まれの子は同学年の子にかなわず、負け犬根性が植えつけられやすい。月齢別クラスは、それを防ぐ工夫だ。
勉強は後からでも取り返せるが人間性は初等教育で決まる。私は地方公立校から東大に入ったが、私立中高一貫校出身者には、大学受験の勉強に打ち込みすぎて、伸びしろがなかったり、人格に欠落があった人も少なからずいた。独自の理念に基づき人間形成に力を入れる名門私立小の出身者は、そんなふうには成長しないだろう。しっかりした人間性が身につく投資と考えれば120万円は決して高くない。
(構成=村上 敬)