アリ社会はオス・メスで役割が大きく異なる。岡山理科大学の村上貴弘教授は「アリの世界はメス中心の社会だ。働きアリはすべてメスで、オスの唯一の役割は女王アリと交尾することだ。そして、交尾を終えたオスアリはそのまま死ぬ」という――。
※本稿は、村上貴弘『アリ先生、おしゃべりなアリの世界をのぞく』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
複雑な社会にいるアリはおしゃべり
数年間にわたって集めたハキリアリ、キノコアリの音のデータを詳細にカウントし、音素解析を行った。そして、次の段階として、それぞれの社会進化のデータと付き合わせてみた。すると、社会が複雑に大きくなればなるほど、おしゃべりの頻度とタイプが増えていくという結果になった。
感覚的に関係はありそうだとは思ったものの、ここまできれいに相関が取れるとは予想外であった。こういった意図しないレベルできれいなデータが出るのが、研究の醍醐味であり、ゾクゾクするほどの手応えを感じる瞬間である。
起源に近いシンプルな社会のアリはあまり動かず、働かない。大学院生時代のエソグラム作成のための50時間行動観察では、約3割の働きアリがまったく働いていなかった。
しかし、農業をするには協力行動が重要なので、サボっていたとしてもある程度はコミュニケーションをとっていると思っていた。が、想像よりずっと話す頻度は低い。むしろ、この“口数”の少なさで、よく農業ができると感心するほどだ。本当に効率がよく、要領がいい。
ほぼ24時間働くハキリアリは桁違い
そして、中程度の大きさの社会を持つグループは、シンプルな社会のアリよりもおしゃべりだが、ハキリアリよりはおとなしい。
そして、数百万の働きアリ、数千のキノコ畑、20年は巣が存続するとんでもない社会を持つハキリアリは桁違いにしゃべる。だって15分間に7700回だもの!
ハキリアリは、ほぼ24時間働いている。まだ若くて働けない個体を除き、ほぼすべてのアリが労働をする。そのタスクも多く、そして大きくて複雑な社会を作っている。密なコミュニケーションがあってこそ、維持できているのだろう。

