物価が高騰しているいまは、資産を現金のまま保有していると目減りしてしまう。経済評論家の頼藤太希氏は「米国ではどんな状況でも資産を安定的に増やせる『パーマネントポートフォリオ』が良く知られている。それを日本人向けにアレンジした資産運用戦略を考えてみた」という――。
分散投資の戦略
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好調を維持し続ける資産はない

インフレ時代では現金の価値が目減りしていくので、資産を守るためにも投資をすることが欠かせませんが、投資にはリスクがつきもの。リスクとは「リターンの変動幅」であり、リスクを取らないとリターンは得られません。投資をする以上、損をする可能性があることを示しています。

いくら調子の良い投資先であっても、ずっと好調を維持するとは限りません。図表1は、1920年代から2010年代までの100年間を10年ごとに区分して、4つの資産クラスの実質リターンを示しています。他の資産と比べて最もパフォーマンスがよかった資産に黄色のハイライト、最もパフォーマンスが悪かった資産にグレーのハイライトをしています。

【図表1】各資産クラスの実質リターン

株はパフォーマンスが概ね好調な資産であることがわかります。しかし、常に好調ではなく、1930〜1939年、2000〜2009年は他の資産と比べて最もパフォーマンスが悪かった資産となっています。債券や金が最もパフォーマンスがよかった時期があることもわかりますね。

資産形成に株は欠かせない資産ですが、お金を使うこと(資産の取り崩し)を意識すると、債券や金(ゴールド)など複数の資産を組み合わせておくのがベターです。

安定したリターンを目指す資産配分戦略

パーマネントポートフォリオは、保有し続けるだけで資産を安定的に増やしていくことを目指す資産配分の考え方。「パーマネント」とは「半永久的な、長持ちする」といった意味です。

パーマネントポートフォリオの資産配分は、資産を現金(ドル)、米国株、米国債、金(ゴールド)の4つの資産に25%ずつとなっていて、米国の経済評論家、ハリー・ブラウン氏によって開発されました。

【図表2】ハリー・ブラウン氏のパーマネントポートフォリオのイメージ

それぞれの資産の役割は、次の通りです。

現金(ドル)……暴落に備えて保有。普段の生活資金の引き出し資産として必須。
米国株……歴史的に経済成長に合わせて大きなリターンを上げてきた資産であり、今後も資産を増やすなら欠かせない資産。
米国債……金利が下がる時に値上がりする。株と反対の値動きをする傾向にある点や、保有中に利息という安定したリターンがある点から保有する意味のある資産。
金(ゴールド)……金自体が価値のある実物資産。インフレや世情不安で値上がりする傾向。株価下落のヘッジ資産としても有用。

特定の資産が値下がりしても、他の資産は値上がりするといった具合に補い合いながら、全方向に備えながら資産を増やすという考え方は良いと思います。

ただし、「パーマネント」と言っているわりには、現金比率が25%というのは少なく感じます。高齢になればなおさらでしょう。心の安定度を考えると、もっと高くすべきです。