仕事に必死になれない、夢中になれるものがない、そんな人はどうすればいいのか。明治大学法学部教授の堀田秀吾さんは「私のところにも『何をやっても燃えられない』と相談に来る学生が増えている。しかし、これは人間としてはごく自然な現象だ」という――。

※本稿は、堀田秀吾『燃えられない症候群』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

コワーキングスペースで一息つくアジア人ビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
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心に火がつかない「燃えられない症候群」

本書のタイトルは「燃えられない症候群」です。

「そんなことば、聞いたことないぞ?」と違和感を覚えた方もいるかもしれません。

それもそのはず。これは私の“造語”だからです。

とはいえ、ただのことば遊びではありません。この名前には、「どうしても伝えたかった思い」が込められているのです。

燃えられない症候群とは、

「本当は何かに夢中になりたい。自分なりに懸命に動いてもいる。それなのに、なぜか心に火がつかない」

そんな状態を指します。

よく似たことばに「燃え尽き症候群」がありますが、両者は全く違います。

燃え尽き症候群は、一度は強く燃え上がり、すべてを出し切った末に、力尽きてしまう状態。燃えられない症候群は、そもそも火をつけることに苦戦している状態です。

燃えたい気持ちはあるのに、なぜか心に火がつかない。燃え尽きたわけじゃないのに、なぜか燃えられない――そんなもどかしさを抱えているのです。

高度経済成長期はバリバリ働いていたのに…

そして、燃えられない症候群にあたる人たちは、決して1つのタイプだけではありません。

たとえば、

● 毎日努力しているのに、燃えている実感が湧かない人
● 少ない労力で結果を出すことを優先し、燃えることを遠ざけてしまった人
● 昔は何かに夢中になれたのに、今はその感覚を取り戻せずに困っている人
● リスクを避けて生きてきたため、過去に燃えた経験がない人
● コロナ禍や社会変化で、燃えるきっかけを失ってしまった人
● まわりと比べて「どうせ自分なんて」とあきらめてしまう人
● 「やらなければ」では動けるが「やりたい」が見つからない人

もちろん、燃えられないタイプはこの7つだけではありません。そして理由も人それぞれ。複数の理由が重なっている場合もあるでしょう。

第二次世界大戦の終戦以降、日本では敗戦から立ち直るために、みんながバリバリ働いていました。特に、1950年代後半から1970年代前半にかけての高度経済成長期は、日本中が「がんばって働くこと」にまっしぐらでした。

朝から晩まで働き、休日も返上して会社のために尽くす。そんな姿が当たり前のように広がっていた時代です。

ここで1つの疑問が生まれます。

なぜ、誰もがそこまでがんばることができたのでしょうか?