48歳風俗嬢と「お父さん」の不思議な関係
緒月月緒。不思議な名前だ。もちろん芸名で「おづきつきお」と読む。
東京都の郊外出身の48歳。風俗嬢として30年以上も働いているだけあって、とても40代には見えない。妖艶な雰囲気を持つ、しっとり美人だ。
月緒は、ひとことでいえば複雑な家庭環境で育った。月緒と父は、血がつながっていない。その理由は、母が月緒を妊娠しているとき、妊娠させた男とは別の相手と出会ってしまったからだ。
しかも、妊娠中の母は月緒が生まれる3日前にその新しい相手と入籍した。下に3人の子どもが生まれ、父親が違う長女の月緒を含む4人兄弟となった。今にいたるまで月緒の本当の父親は消息不明となっている。
本人は自分だけ父親が違うことを知らずに自然と「お父さん」と呼んでいた。
両親の性格は、父は寡黙な暴君。母は弁が立つ。夫婦ゲンカをすると、母が文句を浴びせ、父が手を出す。その暴力がキッカケとなり、月緒が9歳のとき、両親は離婚にいたった。それでも父は月20万円の養育費を渡すため月に2〜3回は家を訪れていた。
27歳のときに失踪
月緒が27歳のとき、父がいなくなった。
その日付もわかっている。3月4日に会社の寮から夜逃げをして、失踪したのだ。月緒が母から父の失踪を知らされたのは、4月になってからだった。
それ以前から月緒は「お父さんの様子がおかしい。絶対にうつ病だよ」と母に兆候を伝えていた。
例えば、毎年大晦日とお正月は離婚した父も含む家族みんなで過ごしていた。しかし、その年の父は年を越す前に会社の寮へ帰ってしまった。
父の仕事はトレーラーの運転手。年をとって、給料も下がってきていた。
いなくなる前日にも異変があった。プロドライバーである父が運転中にコーヒーにむせて壁に激突した。幸い人身事故ではなく、会社は「長年働いているので、責任は問わない。定年までいてほしい」と温情をみせてくれた。この事故とそれまでのうつ傾向が、失踪への契機となったのかもしれない。
月緒に突然「10代のとき専門学校に行かせられなくてごめん」と謝ってきたこともあった。父の意固地な性格を知る月緒はいぶかしがった。そのときに父は「生まれ変わったら鳥になりたい」などとも口走っていた。
「あの人がうつだなんて信じられない」
母はそうこぼすだけだった。月緒は仕事のお客さんでうつの人を見慣れていた。父はその状態に近かった。

