救急車の中でどのようなことが行われているのか。むさしの救急病院理事長で救急科専門医の鹿野晃さんは「救急治療の際に『やれることは全部やってください』と頼む家族は少なくないが、安易に延命治療を依頼しないほうがいい。治療として行われる心臓マッサージの結果として、骨がバキバキに折れることも少なくない」という――。(第1回)

※本稿は、鹿野晃『救急医からの警告』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

日本の救急車
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安易に「やれることは全部」とお願いしてはいけない

人生の終わりをどう迎えるか――。この問いは、誰もが一度は向き合わなければならない、人生最大の課題です。

あなたが突然意識を失い、救急車のサイレンが鳴り響くとき、あなたの家族は医療技術の発展がもたらした難しい選択に直面します。積極的な治療を望むべきか。それとも、愛する人の自然な死を受け入れるべきか。人生の終わりが近づいたとき、あなた自身は何を望むでしょうか?

苦痛に耐えながらも、できる限りの治療を受けることでしょうか。それとも、静かに、安らかに、最期のときを迎えることでしょうか。

私は現在、24時間365日体制で高度な救急医療を提供している病院を経営しながら、今も最前線で働いています。実際の救急医療の現場から、ぜひみなさんにお伝えしたいことがあります。

それは、突然やってくる家族や大切な人の救急時、その場の雰囲気で「やれることは全部やってください」と安易に延命治療や高度な医療をお願いしないこと。

初めての救急車、家族の一大事にパニック状態の中、あなたは大きな決断を迫られます。救急隊員から「高度な医療を希望されますか?」と聞かれるのです。「高度な医療」には、胸骨圧迫、電気ショック、気管挿管、人工呼吸器の装着などが含まれます。しかし、こうした処置の副作用や後遺症についての説明は十分ではないことが多いのです。