「高度な治療」の知られざる中身

たとえば高齢者の場合、胸骨圧迫を1回行うだけで肋骨が折れ、5〜10分続けると肺が傷つき、出血することもあります。効果的な胸骨圧迫を施すには、胸が3分の1くらいへこむほどの強い力が必要で、健康な人でさえ一度受ければ激痛で転げ回るほどの痛みを伴うのです。

心肺蘇生
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
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一方で、血圧を上げる昇圧剤だけを使う場合もあり、これは比較的苦痛が少ないため、「昇圧剤だけは使ってほしい」と希望する家族もいます。問題は、こうした選択を迫られたとき、家族がその意味を十分に理解できているかどうかです。

医学的知識のない一般の人にとって、「高度な治療」という言葉だけでは、具体的にどのような処置が行われ、どんな結果が予想されるのかわからないのが実情ではないでしょうか。こうした説明もなしに、生死をさまよう大切な人の前で、「高度な治療を希望しますか」と聞かれれば、ほとんどの家族は「できることは全部やってあげたい」と考えるでしょう。