羽振りが良い経営者と節約家の経営者、運が良いのはどっち?
いきなりですが、問題です。
1万円の臨時収入が入りました。あなたなら何に使いますか?
1 欲しかったスニーカーを買う
2 友人にディナーをご馳走する
3 好きな作家の講演会に行く
4 貯金する
この質問に正解はありません。手にしたお金をどう使おうが、もちろんあなたの自由です。ただ、運の観点から言いますと、①のように自分のために何かモノを買った場合、あまりコストパフォーマンスが良くありません。
人間には感覚順応という機能があり、欲しいモノを買えた喜びは瞬間的には1万円以上の価値でも、時間がたてばその喜びも慣れっこになり薄れてしまうからです。次にまた別のモノが欲しくなって、結局、余計な散財につながることもよくあります。
では、②のように人のためにお金を使った場合を考えてみましょう。まずは私が体験したエピソードをお聞きください。まだ20代の頃に出会った二人の経営者のお話です。
一人は取引先のA社長。見た目も派手で、普段から「いつでも飲みに連れて行ってやるぞ!」などと、いかにも羽振りの良さそうな発言をする人でした。
ところが、ある日、同期3人と一緒にランチのお誘いを受けたときのことです。席に着くなり「これ5つね」と社長がオーダーしたのは、私たちが自腹でよく食べているのと同じ、いちばん安い定食でした。しかも食後のコーヒーは別料金と知るや「じゃあ、(無料の)お茶でいいよね?」と、こうきたのです。私たちは無言で顔を見合わせ、すっかりシラケてしまいました。
一方、同じく取引先のB社長は、普段から節約家でお金に細かい人。5円、10円単位のコストに執拗にこだわるため、交渉事も長丁場になりがちです。私たちにとっては、ちょっと“やっかい”な社長でした。
そんなB社長から忘年会に誘われました。正直、あまり期待していませんでした。
ところが、指定されたのは高級ホテル。ふるまわれたのは、若い私たちが食べたことのないような豪華な料理でした。そして、帰りにはお土産ばかりか、それぞれにタクシーまで用意してくださったのです。いつもとは別人のようなもてなしぶりに、私たちが驚き感激したのは言うまでもありません。
運を呼ぶ秘訣は、人を「快」の状態にすること
確かにビジネスではお金に厳しいB社長でした。しかし、それは少しでも利益を上げて、頑張って働いてくれている従業員に還元するため。単なるケチではなく、つねに周りの人に感謝し、そのためには惜しみなくお金を使える人だったのです。
この一件以来、私はすっかりB社長のファンになりました。当時は大阪の支店にいたのですが、その後東京に異動になってからも、B社長とはビジネスでもプライベートでもお付き合いが続きました。
その間、B社長の会社は何倍にも大きくなりました。ちなみに、先のA社長の会社はといえば、赤字続きでその後経営が危うくなったと風の噂に聞きました。以上の例から言えることは、運を呼ぶ秘訣は、人を「快適」の「快」の状態にしてあげることなのです。
人のためにお金を使うのは、まさに相手を「快」にして喜んでもらう行為です。人は誰かに何かしてもらえばうれしいし、してくれた相手に好意をもつものです。こちらが見返りを求めたわけじゃなくても、「あの人のためなら」と力を貸してくれることもあるでしょう。何より人に喜んでもらえば、自分もうれしいし幸福感をおぼえます。
つまり、人のためにお金を使うことは、同じ1万円がプライスレスな価値を生み出すということを意味するのです。
大きなお金を使う必要はありません。友人にご馳走する以外にも、出張や旅行先のお土産を同僚に配る、家族に誕生日プレゼントを渡すなど、ちょっとした気づかいを実践していきましょう。お金は使えば減るものです。しかし、誰かのために使えば、あなたの運は減るどころか、どんどん貯まっていくのです。
なぜ宝クジに当たっても不幸になるのか?
③の「好きな作家の講演会に行く」は、①の自分のために使うのと似ています。ただし、同じ自分のためでも、①は「モノ」にお金を使うことで、③は「体験」にお金を使うこと。モノを買っても一時的にしか満たされませんが、体験は自分のなかに蓄積し学びとなります。要するに自己投資です。
講演会やセミナー、何かの勉強会に行くだけでなく、読書や旅行、コンサートや映画、芝居を観に行くのもいいでしょう。スポーツや趣味も大いにやってください。
自ら行動し体験することで、人との出会いがあり、ご縁が生まれます。自然と視野が広がり、新しい価値観も身につきます。つまり、人生がより豊かにおもしろくなり、人としての幅が広がっていくというわけです。
人としての幅は、「器」と言い換えてもいいでしょう。たとえば、宝クジに当たってお金持ちになった人が、散財したあげく破産したなどという話をみなさんも聞いたことがあると思います。人もうらやむツキを手にしたはずが、なぜ不幸になってしまうのか?
実は、それも器と無関係ではありません。小さな器に大量の水を注ぎ込めばあふれてしまうように、お金もその人の器に見合わなければ、いくら入っても出て行ってしまうのです。器がまだ育たないまま突然親の財産を相続した、仮想通貨で大儲け、といった場合も同じことです。
大富豪・竹田和平さんの教え「お金は川の水と同じ」
「もっと収入を増やしたい」「どこかから臨時収入でも入らないかなぁ」。そんなあなたの願いを叶える方法は、先にお金を出すことです。自分のお金を使って、まずは自分の「器作り=体験」を積みましょう。
実際、私の周りの経営者や成功者は、超多忙なはずなのにいったいどこにそんな時間があるのかと驚くくらい、みなさん、ゴルフや家族旅行、芸術鑑賞、好きな分野の勉強……などと精力的に動き回っています。お金持ちだからいろいろなことが体験できるのではありません。もともとそうやって自己投資してきたからお金持ちになれたのです。
その意味で④の「貯金する」は、自己投資どころか、そもそもお金を使わないということですから、運は停滞しがちです。
竹田製菓(現・竹田本社)創業者で、日本一の投資家とも称された故・竹田和平さんは、お金を「川の水」にたとえました。お金はたえず使って世の中に循環させていくことで増えるもの。流れをせき止めれば、(お金という)水は腐ってしまうだけです。
老後のため、家を買うためなど、理由があって貯金している人もいるでしょうから、一概にダメとは言えません。しかし、将来使う目的もなく貯め込んでいるとしたら、それは価値を生まないお金であり、“死に金”と言えます。特に若い方に言えることですが、お金はこの先いくらでも稼ぐことができますから、今しかできない人とのつながりづくりや自己投資のため、そして将来手にする運のために、お金を有意義に使っていきましょう。


