では、どうやれば勉強好きな子供にさせられるか。これは実によく聞かれる質問なのですが、そもそもこの「させる」という考え方がすでに大間違いなのです。心理学者の河合隼雄さんの受け売りですが、教育って、教え育てることではなく、「教え育つ」なんですよ。そして子供は両親だけでは育ちません。おじいちゃん、おばあちゃん、友達、先生、近所の人、サークルの仲間、いろんな人が作る大きなバスケットの中で育つのです。親もそのバスケットの1要素でしかないのです。

僕がいいと思うのは、テレビアニメの「ちびまる子ちゃん」の家庭。まる子ちゃんは、お母さんには厳しく叱られ、お姉ちゃんとは結構厳しいライバル関係だけど、友蔵じいちゃんとはクダラナイことばかり言い合っている。この冗談が言い合える人間関係ってけっこう大切なのです。家庭や生活環境の中に、緊張と弛緩が程よいバランスで存在することになり、それが人格形成にも貢献していくからです。

もしいま、お子さんが小学生や中学生で「土台作りを損ねてしまった」と思うのであればどうすればいいか。焦らず、今できる、正しいことをやればいいのです。1番大事なのは、その子に向いた指導をしてやることです。他の子に当てはまる勉強のやり方でも、それがわが子に適しているかどうかは別です。成長には個人差があり、早めに伸びる子もいれば、後からじわじわ成長してくる子もいます。お母さんは目の前の成績にとらわれないことが重要です。土台を作りなおすくらいの気持ちで、お子さんに正面から向き合うことです。

事を始めるのに遅すぎるということはないのですから。じゃあいつやるか、それこそ「今でしょ!」なのです。

林 修
東進ハイスクール、東進衛星予備校の現代文講師。1965年愛知県生まれ。東京大学法学部卒業。長銀に入行後、半年で退行、予備校講師となる。現在、東大特進コースなど難関大レベルを中心に授業を担当。全国の優秀な高校生から、現代文のカリスマとして慕われている。
(飯田 守=構成 山崎ゆり=撮影)
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