グループ全体で「情報の交差点」へ
部下の育て方で言えば、秘書室の前にいた資本市場部でも、ありがたい体験をした。国内の大企業が海外で米ドルやドイツマルク、あるいはスイスフランで社債を出す際に、発行業務を手伝う職場だった。当然、外国の金融機関や証券会社の幹部たちが、しばしば部長のところへやってくる。
着任して、すぐに、部長に呼ばれた。「きみは、まだ仕事をよく知らないのだから、海外のお客がきたときには必ず陪席し、勉強しろ。そして、窓口役になれ」と指示される。ところが、面会中に、部長は「あとはよろしく」と言って消えた。やむを得ず、1人で外国人客たちに応対した。必然的に、仕事も覚えていくし、英語も上達する。
腹が据わった上司だった。部下の成長のためとはいえ、部には、かなりのリスクがあったはずだ。でも、お陰で、私生活も含めて豊かになった。毎日、英字紙を読むのも苦ではないし、毎年の夏休みには妻と外国へ旅行する。
振り返れば、自分の銀行員としてのDNAは、市場感覚とチームワーク重視の思考かな、と思う。市場感覚については、前回(http://president.jp/articles/-/10040)紹介した。では、チームワークとは、何か。指揮官の下で、統率のとれた行動をとることだけではない。様々な地位や状況にいる面々が、それぞれ力を発揮し、連携を強めて役割を果たすことも、大事なチームワークだ。金融危機を乗り越えた源泉も、その力だ。
組織には、コピーのように同じ人間がいるわけではない。1万人いれば、1万通りの得意分野があっていい。その持ち味を出し合うことが重要だ、と考える。小口の無担保ローンで言えば、三井や住友といった銀行系の部署よりも、グループに入った旧プロミス(現・SMBCコンシューマーファイナンス)のほうが得手だろう。それなら、その分野は彼らが力を入れていけばいい。