3割の会社では導入効果がなかった

ただし、アメーバ経営が果たした役割を過大評価してはいけない。拙著『JAL再建の真実』(講談社現代新書)に詳しく書いたので、そちらを参照してほしいが、破綻前に米系コンサルティング会社主導で作られた人件費の5割削減やコスト高の航空機の処分といったリストラ計画がなく、バトンを受けた再建委員会が会社更生法による負債整理と公的資金投入による再建資金確保のメドをつけていなければ、JALはアメーバ経営導入前に消滅していた。

限界もはっきりしている。2012年3月期はもちろん、現在進行中の2013年3月期も売り上げが前期比0.8%増と低水準で推移し、以前の水準を回復できない状況が続いているのである。つまり、アメーバ経営で社員が売り上げ拡大の大切さを頭で理解できるようになっても、実現する力が付いたことにはならないのだ。JALは採算を考える普通の会社になったが、強く生き抜く戦略や体力が付いたわけでもない。

アメーバ経営の導入実績も示唆に富む。前述の松井取締役によると、昨年9月段階でアメーバ経営を導入している会社は476社ある。が、期待した効果を得られず、やめた会社が3割にのぼるという。

生産や採算の管理について、内外で多様な考え方や手法が編み出されてきた。日本企業にも、京セラのアメーバ経営だけでなく、トヨタ自動車のカイゼンやカンバン方式、キャノンのセル方式など様々なアプローチが存在する。しかし、万能なものはない。それらは道具に過ぎず、使いこなして成果をあげられるかどうかは使う企業次第ということを肝に銘じる必要があるだろう。

(撮影=堀 隆弘)
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