飛行機の利用にはどれだけのコロナ感染リスクがあるのか。航空ジャーナリストの北島幸司氏は「機内は2~3分ですべての空気が入れ替わるなど、『3つの密』を防ぐ仕組みが備わっている。搭乗者が注意すべきなのは機内での感染リスクよりもフライト前後の行動だ」という——。
機内写真
筆者撮影
JAL国内線エアバスA350-900型機のJクラス座席。

国際航空運送協会の結論「感染リスクが低いことを示唆している」

新型コロナウイルスの感染拡大で、航空業界は利用者が激減し窮地に立っている。多くの読者も機内での感染リスクについて不安を感じていると思う。外出自粛が解かれても、飛行機の利用は避けたほうがいいのだろうか。

「不要不急」の観光旅行を再開するのはまだ時間がかかるだろう。しかし飛行機の利用自体は感染リスクの高い行為ではなさそうだ。世界の8割以上の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は、5月5日、機内はいわゆる「3密」の状態にはならず、「感染リスクが低いことを示唆している」という内容のリポートを発表している(※資料1)

IATAは、他の交通機関と異なって飛行機での集団感染のリスクは低いと強調している。確かに飛行機では集団感染は起きていない。一方で、船舶では、横浜港に接岸したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」、あるいは米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」で集団感染が発生している。

なぜ、飛行機では集団感染が発生していないのか。

IATAはその理由として、①乗客は前を向いて座っていること、②対面の接触は限定的であること、③座席シートが後方から前方への感染をバリアする役割があること、④天井から床への空気の流れは機内前後への感染の可能性を減らすこと、⑤機内空調で高効率粒子状(HEPA)フィルターを使用している、などを挙げている。