恨みを買わずに解決するために最も重要なポイントは、相手を立てることと平塚氏は言う。

「ピアノを弾きたいお気持ちはわかります」と、まずは相手の気持ちを尊重し、そのうえで「なんとか配慮してもらえないでしょうか」とお願いする。

「日本の社会常識や法律の根底には、弱者救済の思想がある。この国では自分を弱く見せたほうが得をするのです。法律を振りかざし理屈で相手を責め立てる姿は、いかにも強い。日本社会では反感を買ってしまいます」

願いが聞き入れられないなら、多数派工作をするしかない。マンションの住人なら管理組合に訴え、戸建てなら自治会に訴える。周囲の住民の大半を味方につけてしまえば、相手は要求を呑むか、転居せざるをえなくなる。

一方、ストーカー被害の場合は、警察が動きやすい環境をつくってやることがポイントになる。警察は行政サービスを行う機関のひとつ。警察が動くことで被害者の不倫行為などが周囲に知られ、被害者本人からクレームがきたりすると、担当者の人事評価に大きな×がつく。

桶川ストーカー事件以降、民事不介入の姿勢を改めたとは言うものの、被害者のプライバシーが傷つきやすいストーカー事件に対して警察が慎重であることに変わりはない。先日も、警察に再三相談していたにもかかわらず、被害者の女性が殺害されてしまう事件があったばかりだ。

「理想的なのは、加害者の妻や家族を説得して、夫を、息子を止めてほしいと警察に訴えさせることです。加害者サイドからの訴えなら、警察は動きやすい。近隣トラブルにせよ、ストーカー被害にせよ、単身で法律に訴えるのが最も危険な方法であることを肝に銘じておくべきでしょう」(平塚氏)

相手が明らかな異常者だった場合は、「引っ越してしまうのも選択肢の1つ」だと、両氏は口を揃える。法をかざして闘うよりも、逃げるが勝ち。命を守る知恵である。

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