【mucco】それから、自分で手を動かし工夫して何かをつくる、生みだす、ということもいまとなっては贅沢ですよね。私の母は、和洋裁を仕事にしていましたから、服を買ってきてそのまま着るということは子どものころからなかったです。
【藤川】売っていないから自分でつくる、買えないものは工夫する、という発想は、お金がないところから始まっていますよね。
【mucco】はい。あの当時の一般家庭はみなさんそれぞれ得意分野で工夫して暮らしていたように記憶しています。でも工夫することを1回覚えると、お金が手に入っても、やっぱり工夫することが楽しいんですよ。
【藤川】お金を出せば何でも手に入るということがつまらなくなってしまう。
【mucco】そうそう。そのままだと何かつまらない。
家計簿よりもまず予算表を作ってみよう
【mucco】洋服を選ぶときに、何でぶれないのですかとよく聞かれるんですが、最大の理由は予算です。
【藤川】予算を守ろうという意識から、工夫が生まれるんですよね。
【mucco】がっちり守る必要はないけれど、どこかで帳尻はきちんとあわせる。
【藤川】そう。もっといえば、家計簿よりも予算表のほうが重要なんです。本当は。
【mucco】予算は計画、家計簿は記録。
【藤川】そのとおり。今月のお給料がこれだけで、これだけ使ったら5万残った。貯蓄しよう!というのが家計簿。入った、使った、残った、ですね。
【mucco】入ってこなくなると残らない。
【藤川】自分でコントロールできないんですよ。最初に予算をたてると「残った」じゃなくて「残す」というアクションにつながる。
【mucco】先が読めないとは言っても、大体のご家庭はいくら入ってくるか、貯蓄がいまどれくらいあるかはわかりますよね。会社での評価や、家族関係や人間関係がこれからどうなるのか、子どもはいったいどんなふうに育つのか、といったことにくらべれば、自分の家の経済状況は比較的コントロールしやすいものだと思います。
【藤川】目の前の家計ばかり見るのではなく、長期的に考えてれば考えるほど、じつはいまできることの選択肢は広がるんです。今家計が苦しい、じゃあ食費に手をつけよう、次はお父さんのお小遣い……みたいなね。そうやってとにかく目の前の苦しみから逃れようとして、頑張っている自分に満足してしまう。今日は安いトイレットペーパーを買いに行ったから数十円得したとか、見切り品を買いに行ったとか。でも長期的なことを考えれば、固定費を削ったほうがよっぽど楽だし、成果も出るんです。