【mucco】で、お買いになって。

【藤川】5年間かけて準備はしていましたからね。ほぼライフプラン通りです。でも娘の1件がなければ、もうしばらくは1DKだったかもしれません。

【mucco】もう少し頭金を貯めていた?

【藤川】そうですね。

「ケチ」と「贅沢」を両立させるイノベーション

【mucco】ただ節約そのものが目的化するときびしいでしょう。たとえば使っていない車を手放そうというとき、それで困ることはないとしても何か「削った」という感じが大きすぎるとお金は貯まってもストレスになりますよね。車を持たないことによって何ができるかを考える「発想の転換」があるといいのかなと思っています。

【藤川】これは非常に重要な概念ですね。ただ、われわれは家計のアドバイザーだから、やはり「ここをカットして支出を下げましょう」というところからしか入れません。「ケチケチ贅沢」は、そこにイノベーションを起こしたわけですね。「ケチ」と「贅沢」は本来なら相容れない概念で、トレードオフの関係ですから。

【mucco】トレードオフ。

【藤川】ケチか、贅沢か、どちらかひとつかしか成り立たない。私は元々研究者をやっていたのですが、コスト削減と高性能化は通常はトレードオフになります。それを何とか両立させたい、安くていいものをつくりたいと考えると、イノベーティブな技術が生まれるんです。

【mucco】私は制約があるからこそ創造が生まれて、その人らしさが発揮できると思っています。おしゃれにもそういうところがあります。

【藤川】まさにそのとおり。

【mucco】お金が潤沢に使えないという制限の中で大好きなおしゃれを楽しもうとすれば、限られた予算で組み合わせしやすいものは何かを考え、自分に本当に似合うもの、自分はどう見られたいかを考える。かわいく見られたいのか、きれいに見られたいのか、格好よく見られたいのかによっても服を選ぶ基準が変わってきます。制約があるからおしゃれができないのではなく、制約があるから、自分らしくなるのでは。

【藤川】わかります。

【mucco】何もしなくても、何でも手に入るというのは逆につまらないだろうなと。

【藤川】何でも買える人は、だんだん買いたいものがなくなってくるんですね。

【mucco】それこそが俗に言う贅沢な悩みかもしれません。

【藤川】お金を使うという行為が目的化していくとだんだん空しくなってくる。

【mucco】お金さえ出せば、すぐ満たされるものってつまらないんですよね。

【藤川】お金を貯める1番の秘訣は、そういうふうに言ってくれる奥さんをもつことかもしれませんね。

【mucco】お金が貯まるだけじゃなくて出世もしますよ(笑)。