公募制により、36歳の支店長が誕生!
定期的なグループ間異動に限らない。社員の自発的なキャリア形成を推進する施策が(1)ルーキージョブリクエスト制度(2)ジョブ公募制度(3)支店長公募制度──の3つである。ルーキージョブリクエスト制度は、総合職に当たる基幹職で採用された社員に、最初の配属先を1年経過した時点で本人が希望する職務を自己申告し、その希望職務にそったグループ各社の人事異動先を検討するものだ。
「入社後はじめての人事異動の際に次はどういう仕事をやりたいかを全員に聞く。1年後に全員が異動するわけではなく、人によっては2年後、3年後に異動することになるが極力希望にそうようにしている」(倉中人事部長)
新卒の圧倒的多数はみずほ銀行の支店勤務になるが、たとえば支店経験を通じて信託業務の専門性を深めたいと思えば、みずほ信託銀行への異動も可能となる。銀行の人事といえば、本人の希望に関係なく会社が決めたジョブローテーションによって命じられるままに転勤を繰り返すというのが通り相場だった。それが自行内だけでなく会社の垣根を越えて自らの希望で異動できるのは画期的ともいえる。
同様にジョブ公募制度もグループ企業の各部門が年に1回、社内イントラネット上に募集広告を掲示し、応募して合格すれば異動できるという仕組みだ。グループ入社後3年目以上の社員で現在の所属部署に1年以上在籍していれば応募できる。ジョブ公募は2002年にスタートしているが、募集職務は毎回180を超え、合格者は累計で500人を超えている。支店長公募制度は若手の早期育成と積極的登用の観点から課長クラス以上の45歳未満の社員が応募できる。03年以降、年に2回募集しているが、これまで累計で60人以上が合格し、最若手では36歳の支店長も誕生している。
6社の全社員は3万4000人。共通の制度や諸施策を用意しても社員一人ひとりに着目し、実際に運用していくのは並大抵のことではない。運用の要となるのが人事部門だ。グループ各社に人事部があり、人事制度の運用や配置、育成などについて常に一体となって運用する体制を築いている。毎週1回、各社の人事異動や評価を担当する次長、人事企画担当の次長の両方が集まる次長会を開催するほか、人事部長による月1回の部長会、人事担当常務による四半期ごとの会議もある。
「採用活動や育成をはじめ人事全般について人事部門が常に連絡を密にしている。それぞれ独立した金融機関であるが頻繁に情報を共有し、共同で施策を推進する金融機関はほかにないのではないか。この点も当社の最大の特徴である」(倉中人事部長)
採用窓口もグループで一本化する一方、入社後の育成、転籍異動後の本人の仕事ぶりや評価などの情報もグループの人事部門が共有する。端末を叩けば、本人の職務経歴や過去の人事評価、キャリアプランなどの情報が瞬時にわかる仕組みになっている。配置の際には「人材育成の観点から、たとえばコーポレート銀行のAさんはみずほ証券で経験を積んだほうがいいのでは、という話もする。セクショナリズムに陥ることなく、各社の人事部門が3万4000人の人事データを共有している」(倉中人事部長)。
持ち株会社体制とはいえ、各社に人事部が存在することは、効率化の観点から人事部門の縮小・一元化という世の中の趨勢とは逆行しているように見えるが「社員一人ひとりに目が行き届くことで安心感を与えると同時に、グループ人材の活用という人的シナジーを生み出す点ではむしろプラス」(倉中人事部長)と自負する。