メディア戦術は一貫も、外交問題が落とし穴に
橋下さんを押し出したメディアの原理は、既存政治や政党に対するもやっとした有権者の不支持の態度であり、それが小泉改革の熱狂や、民主党の政権交代の世論を形成し、後押ししました。政権交代時に民主党を支持した有権者層が、前回の選挙で日本維新の会支持に回り、全国で20%弱という新興政党としては破格の支持率を得た理由はここにあるのです。
橋下メディア戦略のつまずきは、数字上は去年7月の女性スキャンダルに端を発します。子どもを七人儲ける妻帯者である橋下さんの淫らな性生活を、高級娼婦とされる女性に暴露されたこの一件は、橋下さんのメディア広報の受取先である女性有権者からの支持急落という致命的な一打を与えました。
我が国の女性有権者は、救済の余地のない女性スキャンダルについてはかなり容赦ないのが特徴です。例えば、みんなの党の渡辺喜美さんも離婚騒動が持ち上がりましたが、あれは奥さんの側にも問題があるという「救い」がありそこまで支持率を落とすものではありませんでした。が、橋下さんの場合は、奥様や子どもたちを置いて、欲望の赴くままに歓楽街で大枚はたいて享楽に及んだとなると女性支持は壊滅してしまいます。実際に、橋下徹さんに対する好感度という意味では全国女性層に対してはそこまで高くなかった支持率が、スキャンダル後の一部週刊誌で実施したパネル調査では10ポイント以上も下落させていました。
そのような下地のあるところに、旧日本軍の慰安婦を「必要だった」とした問題発言が出たのだからたまりません。5月27日には釈明のために日本外国特派員協会で記者会見を開き、在沖縄米軍に風俗業利用を勧めた自らの発言は「不適切な表現であり撤回する」としたものの、慰安婦問題への発言は「(慰安婦は必要だったと)誤報された」と撤回も謝罪もしませんでした。(※2)