「東電に原発を扱う資格に疑念もやむなし」

「会長探しどころではない。社長だってクビになってもおかしくない」

東京電力ホールディングス(HD)の柏崎刈羽原子力発電所での相次ぐ不祥事で、社内からはこんな声があがる。違う社員のIDをつかって同原発の中央制御室に無断で入った事案に次いで、監視装置が長期間にわたり故障していたことが発覚。原子力規制委員会は、外部からテロリストなどの侵入を許す恐れがあるとして4段階ある安全上の重要度のうち最も重い「赤」の評価を下すなど、東電はまさに「レッドカード」を突き付けられている。

東京電力柏崎刈羽原発で不祥事が相次いでいることを受け、頭を下げ謝罪する東電の小早川智明社長(左から2人目)ら=2021年4月7日、新潟市中央区
写真=時事通信フォト
東京電力柏崎刈羽原発で不祥事が相次いでいることを受け、頭を下げ謝罪する東電の小早川智明社長(左から2人目)ら=2021年4月7日、新潟市中央区

あまりにずさんな原発の管理に国会に召集された東電HDの小早川智明社長はひたすら「大変なご心配をおかけし、深くおわび申し上げる。徹底的に原因を究明し、抜本的な対策を講じる」と答えるのが精いっぱいだった。

本来なら原発の再稼働を後押しする立場の与党自民党も、野党の執拗しつような追及に菅義偉首相が「東電に原発を扱う資格に疑念もやむなし」と答弁せざるを得ない羽目になった。「本来なら社長が責任を取って辞めるべきほどの不祥事だ」(同)との声も社内からもあがる。

三顧の礼をもって招かれた川村隆氏は80歳で退任

しかし、東電や政府内から東電・小早川社長の解任を模索する動きはない。「今、ここで小早川社長を追い出すのはたやすいが、また何かトラブルが発覚した際に、新社長のクビを切ったら、何人社長がいてもきりながない」(自民党幹部)というのがその理由だ。

本来なら、3月末の取締役会で現在、空席になっている東電HDの会長を決めるはずだった。同社の会長は日立製作所の再建を果たし、三顧の礼をもって招かれた川村隆氏が昨年6月末まで就いていたが、「80歳になったら退任する」という本人からの強い希望で社を去った。

その後、この1年間は「ピンチヒッター」として、三井物産の元会長の槍田松瑩氏が取締役会議長という形で、川村氏の後任を務めている。その槍田氏も6月末には退任する意向を固めている。