すでに全国の原発で保管できる容量の75%が埋まっている
福井県への回答期限が迫る中で、森本社長は青森県むつ市にある中間貯蔵施設に福井県から出る原発の使用済み核燃料を東電などと一緒に保管してもらう「共用案」を業界団体である電気事業連合会を通じて申し入れた。しかし、もともとこの中間貯蔵施設は東電と日本原子力発電が青森県やむつ市と設立したものだったため、事前に関電から何の要請も受けなかった青森県やむつ市が猛反発。関電の思惑は宙に浮いた。
関電の森本孝社長は福井県知事に「23年末までに建設予定地を確定する」と年明けに申し入れ、その場を取り繕ったが、本来ならこの問題も20年末に解決するはずのものだった。
国の原子力政策は使用済み燃料を処理して再利用する核燃料サイクルを掲げる。しかし、青森県六ケ所村に建設中の再処理工場の稼働が遅れ、各社は原発内の燃料プールで保管している。すでに全国の原発で保管できる容量の75%が埋まり、いずれ限界が来る。
なかでも関電は4基の原発を再稼働済みだ。稼働から40年を超える原発3基の稼働も予定する。大手電力の中で原発依存度が一番高い関電にとって40年超の原発の再稼働は経営に直結する。東電がNTTなど新電力に市場を奪われているように関西圏でも関電は大阪ガスなどの台頭でシェアの低下にあえぐ。
年末年始の寒波到来では「停電一歩手前」に追い込まれた
原発の再稼働でようやく黒字転換しても、新電力の攻勢や関西圏の経済の地盤沈下で市場自体、縮小している。「原発の安全費で予算が根こそぎ取られ、再エネ投資など新規事業に充てる余力はない」(関電幹部)と嘆きの声が日増しに高まっている。
日本の電力大手が危機に瀕する中で、政府内で検討されはじめたのが、原発の運営体制の抜本改革だ。
年末年始の寒波到来では「停電一歩手前」に追い込まれた。今回の電力逼迫は多くの原発が稼働していない中で、液化天然ガス(LNG)に電源を頼ってきた日本の電力供給体制の盲点を突いた。欧州とは異なり、日本の環境では再エネには頼れない。そんなエネルギー貧国・日本は、現実的には原発の存在を許容せざるを得ない。
本来なら、今回の電力逼迫は大手電力にとって「主力電源としての原発」の存在をアピールする絶好のチャンスだった。しかし、東電や関電など日本の原発政策をけん引すべき2社が安全性の確保や使用済み核燃料の問題などで「自滅」した。