ただし、氏のエッセーをよく読むと、会社と同僚に対する深い信頼と愛情に裏打ちされていることがわかる。「出世とは無縁」「特技も趣味もなし」だと自分を落とすことも忘れない。だからこそ、精力剤やキャバクラの話が出てきても下品に感じられず、むしろ「こんな会社で働けたらいいなあ」と好感を抱かせるのだ。

組織風土改革を専門とする経営コンサルティング会社、リンクアンドモチベーションの田中康之・モチベーション研究所所長は、こう分析する。

「顧客に向き合う営業活動や、新しい価値を生み出す創造性を重要視する職場では、ユーモアや笑いを通じた明るさやゆとりを大切にする風土があります」

ソニーの設立趣意書には「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」とあり、堀場製作所の社是は「おもしろおかしく」だ。最近では、社名に「面白法人」を掲げるカヤックもある。いずれも自由な発想を重視して成長してきた優良企業だ。

田中氏は職場でのユーモアの大前提となるのは人間関係だと強調する。

「同僚をいじって笑うユーモアなどは、相手との信頼関係がなければ、『いじり』が『いじめ』になってしまうでしょう」

同僚や上司をいじり続けている斎藤氏のユーモアも、日頃から培ってきた人間関係があるからこそ成り立っているのだ。