いま求められるリーダーには何が必要か。昭和女子大学総長の坂東眞理子さんは「これからのリーダーは、大きな課題や目標を他人事だと思わず仲間とshareする、お互いに力を出し合い補い合って取り組む(support)、そして何よりも困っている人、苦しんでいる人に共感する(sympathy)の3つのSが必要だ。この3つとも、困っている人、苦しんでいる人への共感が背景にあり、それがエネルギーの源になる」という――。
※本稿は、坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
人は他人の不幸に接すると心を痛める
「感謝する心」の基本は、他人の境遇や気持ちを推しはかる力です。
つまり「共感力」です。これは利他心を育む基礎中の基礎です。
性善説や性悪説など、人間性というものに対してはさまざまな見方がありますが、サイコパシーのような病的な性格でない限り、人は他人の不幸に接すると心を痛めます。
ロシアの侵略に苦しむウクライナの人々、イスラエル軍との衝突で犠牲が増えるばかりのパレスチナ・ガザ地区の人々、地震に被災した人々、飢餓に苦しむアフリカの子どもたちの映像などを見ると、ほとんどの人が「つらいだろうな」「悲しいだろうな」と感じるはずです。
身近な例でも、若くして配偶者を亡くした人、子どもの犯罪に苦しむ親、貧しくて学校に通えない子どもたちなどを見ると、気の毒に思うのが普通です。これが「共感力」。多くの人々は、多かれ少なかれ苦しみや悲しみのなかにいる人への共感力を持っています。
苦しみや悲しみばかりではありません。他人の幸せや成功をわがことのようによろこぶのは、一般的には難しいことですが、それが自分の子どもや配偶者なら、自分のことのようにうれしく感じるはずです。
いえ、わが子の成功は自分のこと以上にうれしいという人もいます。スポーツチームの監督やコーチ、塾の教師なども、教え子たちの活躍や成功をわがことのようによろこびます。また「推し活」のように、ファンとしてアーティストやスポーツ選手の活躍をよろこぶ人もいます。