普段は「淡い交わり」でいながら、困難な状況には手をさしのべる

しかし最近は、そうしたトップダウン型のリーダーではなく、チームメンバーの困難を除き、面倒を見るサーバント型リーダーや、メンバーに当事者意識を持って目標達成に巻き込むインクルーシブ型のリーダーが成果を上げるといわれています。

こうした新しいリーダーシップには共感力が不可欠です。部下が抱えている公私の困難に共感し、それを除くために動く必要があるからです。こうしたリーダーに適した女性も多いのではないかと思います(もちろん、個人差はありますが)。

職場だけでなく、家庭でも親と子だけでなく、夫婦の間でも兄弟の間でも、たとえ解決に至らなくても、お互いの困難を思いやり、共感することで、絆は強くなっていくはずです。

ただ、現代ではこの共感力は、やや危機的状況にあります。

現代のように人々が自由を求める社会では、他人への思いやりは「干渉」として、むしろうとまれかねないからです。

「困っている状況を人に知られたくない」「その人の『自己責任』で他人は関係ない」「個人情報はお互いに詮索しないように」という風潮が強くなり、共感力が育つ機会が減少しています。

べたべた束縛する関係をつくれというのではありません。普段は「淡い交わり」でいながら、いざ困難な状況になった人にはそっと手をさしのべる……そんな関係が広がっていけば、この世は温かく住みやすくなります。

女性の同僚を励ます女性のビジネスパーソン
写真=iStock.com/kokouu
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同じ苦しみを抱える人に共感することで救われる

どんなに苦しく厳しい状況にある人を見ても、「自分とは関係がない他人事」と思う人と、たとえその課題を解決できなくても、「大変だな」と共感し、「自分に何かできることはないか」と考える人がいます。

「共感したって、具体的行動をしなければなんの役にも立たないよ」と批判されるかもしれませんが、「誰かが自分の苦しみを知ってくれている」とわかれば、それだけで苦しみが少し和らぎます。「共感の力」は偉大なのです。

難病に苦しむ患者の会、子どもを失った親の会、犯罪被害者の会など、理不尽な不幸に遭ってやり場のない悲しみや怒りに苦しんでいる人たちが、同じような境遇の人に出会い、この不幸に見舞われているのは自分だけではないと知るだけで、自分も頑張ろうという勇気が湧いてくるそうです。同じ苦しみを抱える人に共感することで救われるのです。

共感は、苦しむ個人の気持ちを癒すだけでなく、勇気づけ、苦しみや困難に打ち勝つ力を与えてくれます。

「人間は生まれてくるときも一人、死ぬときも一人。そう達観すれば、生きているときに一人であることをさびしがることはない」といわれます。

たしかにそうなのですが、ほとんどの人は、自分の努力を、あるいは苦しさや理不尽な仕打ちに耐えていることを知ってもらいたい、認められたい……と願っています。

自分が何をしても、どうなっても誰も関心を持ってくれないのだと思うと、深い孤独感にとらわれてしまいます。