「他人から評価されたい、自分の価値を認めてもらいたい」と欲するのは、自分の心が不安定であるからとも考えられます。心の奥で自分が自分自身に不満足なため、他人からの評価によって自らの価値を実感しようとしているのです。つまり、自分が精神的に自立しておらず、他者に依存しようとしているのだということも自覚するとよいでしょう。
そして自分が尊重されたいのは皆同じなのだから、他者から大事にされたければ相手を尊重することです。他者のプライドをくじくと、相手は無意識のうちにやり返すような行動を取るものです。
相手の欲を満たしてあげようと褒めるのは、得てして相手を増長させることにもなるので、必ずしもいいこととはいえません。しかしながら、他人の自我を傷つけないように気遣うことは大切です。お互いが尊重し合えば、互いにとって居心地のよい環境がつくれます。
私はかつて、「自分」よりも
愛しいものを探して
世界中を
求め回ったけれども、
「自分」より愛しいものは
どこにも見つからなかった。
それは他者にとっても同じこと。
人も動物も細菌も、
あらゆる生き物にとって
「自分」がいちばん愛しいもの。
生き物はみんな、ナルシスト。
ゆえに自分を愛しいと思うなら、
他の生き物を
傷つけないように。
(小部経典『自説』)*『超訳 ブッダの言葉』160
※記事中「ブッダの言葉」は、すべて小池龍之介編訳『超訳 ブッダの言葉』(ディスカヴァー刊)による。
1978年生まれ。東京大学教養学部卒。2003年、ウェブサイト「家出空間」を開設。現在は「正現寺」と「月読寺」(東京・世田谷)を往復しながら、自身の修行と一般向けに瞑想指導を続けている。『考えない練習』など著書多数。