大事なのは「子供の話を聞くこと」「一歩待つこと」

――人間としての土台を育てるために、家庭でできること、親がすべきことを教えてください。

【高際】親子で話をする時間をたくさん持ってほしいですね。親御さんも自分の感情や感性としっかり向き合って、「ありがとう」「うれしい」「きれいだね」などと感じたことをしっかり言葉にして子供に伝えられるような会話がいいと思います。ただし、親が教え込もうとしたりしないこと。特に受験が近づいてくると、親御さんが何かを質問して、子供がそれに答えるという一問一答形式になりがちですから(笑)。

【工藤】ですね。

工藤誠一先生(左)と高際伊都子先生(右)
撮影=市来朋久

【高際】そもそも教え込めないものもありますし、逆に親が教え込もうとすることで、子供の“学び取る力”を減退させてしまうこともあります。

【工藤】私は、親は「一歩待つ」ことが大事だと思っています。特に最近の親御さんはすぐに、結果、結論を出そうとしてしまいがち。皆さん、忙しいですからね。うちの生徒の親も6割は共働きなので、どうしても親のペースを崩したくないんですね。子供の勉強の進捗しんちょくをエクセルで管理している親もいますが、当然のことながら、子供は親の自己実現の道具でもないし、親のペースでは動いてくれません。むしろ、子供のペースを尊重して、親は一歩待つ。これが子育てだと思います。

【高際】子供の話って、親御さんに何かを解決してほしいという内容ばかりではなくて、自分を受け止めてほしいという発話もあります。特に10代前半までの子供は、自分が何を話したいのか自分でもわからないので、順番もバラバラ、思いついたことから話すので結論がわからない。でも、話し終わる頃には、何を言いたいのか、親にもなんとなくわかってきます。「結論を先に」と焦らせるのではなく、一歩待ってみてほしいです。

【工藤】あとね、休みの日にのんびり過ごす時間も大事。海外にホームステイすると「日曜日は家でのんびり」というケースも結構多いんですよ。それとね、あんまり子供を縛らないほうがいいと思います。ゲームはダメだ、スマホは良くないってね。彼らは彼らなりに考えていますから。ただ、大人のルールとはちょっと違うかもしれないけれど、そこも待つことが大事です。うちはね、“早弁”という概念がないんですよ。弁当はいつ食べてもいい。昼休みは昼休みで、いろんな活動をしている生徒たちが多いから。ただし、教室に弁当の臭いが残るのは次の時間の先生に失礼だから、教室以外で食べること。

【高際】うちのほうがゆるいかな。立って食べなければOKです(笑)。ウーバーイーツで出前をとっている生徒もいるぐらいで。

【工藤】それはすごいね。

(構成=田中義厚)
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