生態学的に考えて70億人は多すぎるので、少子化は悪いことではないと私は思うが、高齢者が若い人より多くなるのは、過渡期の現象としてやむを得ないとはいえ、多くの問題をはらむことは確かだ。そのひとつに家族形態の変化がある。「2010(平成22)年の国勢調査で、一人暮らし世帯(32.4%)が初めて夫婦と子供世帯(27.9%)を抜きトップとなった」(産経新聞 13年3月4日付、朝刊)という。
一人暮らし世帯の増加原因は高齢化と未婚化、そして離婚増である。今後一人暮らしはますます増えると予想される。1980年には一人暮らし19.8%、夫婦と子供世帯42.1%だったのだから、家族という形態が崩壊しつつあると言ってよい。それに伴って現行の社会保障制度は大きな危機に直面するだろう。
1人で生活できなくなったら野垂れ死ぬのが当然という世界にならない限り、要介護の一人暮らし老人を誰がどのように世話をするのか。国の財政赤字は1千兆円を超え、公的な介護サービスに使える財源も限られている。国民皆保険制度や生活保護制度もそのうち崩壊するかもしれない。
いつか一人暮らしの要介護老人にならないとも限らないわけで、国民みんなで考えるべき問題だと思う。
生物学者。1947年生まれ。早稲田大学国際教養学部教授。生物学の観点から、社会や環境など幅広い評論活動を行う。著書に『生物多様性を考える』『アホの極み 3.11後、どうする日本!?』『ナマケモノに意義がある』などがある。昆虫採集が趣味。