人間の平均寿命の延びはすさまじい。縄文時代の平均寿命はわずか12歳であったという。15歳まで生き延びた人の平均余命は16年であった。明治時代の初期でさえ、日本人の平均寿命は男女共に30歳台の半ば。平均寿命が50歳を超えたのは1947年で私が生まれた年だ。それから60年以上の歳月が流れて、2010年の平均寿命は男性79.59歳、女性が86.35歳まで延びた。

公衆衛生のインフラ整備が進んで、伝染病で亡くなる人が激減したのが、平均寿命が延びた最大の原因である。

一方、平均寿命が延びるに従って、死因も大きく変化し、戦前に上位を占めた結核、胃腸炎、肺炎などに代わり、現在はガンがトップで心疾患、脳血管疾患の3つを合わせた死亡確率が5割を超えている。これらの生活習慣病には遺伝的要因と生活習慣の2つが大いに関連しており、かつて長寿県とうたわれた沖縄県では、ヘルシーな食習慣が長寿の原因といわれた。

ところが10年の統計で見ると、男女とも長野県が1位で、男性80.88歳。女性87.18歳である。沖縄県は女性は3位、男性は27位に転落している。戦後のアメリカナイズされた食習慣の影響が出たようだ。死亡率は65歳以上では全国平均より低いが、65歳以下ではかなり高いところからみても、若いときの食習慣が寿命に与える影響は無視できないと思われる。

若いときの死亡が激減し、寿命が延びるにつれて人口も加速度的に増加した。1万年前の世界人口は500万~1千万人。紀元0年頃が2億~3億人、20世紀の初頭でさえ16億5千万人であった。現在の世界人口は70億人。約16万年前に現生人類が誕生して以来、この世に生まれ出た総人口は約500億人と推定されているので、そのうちの何と14%が今生きている計算になる。