それを日本でいち早く実践しているのが、流通の最前線で事業を展開するコンビニエンスストアチェーンの王者、セブン-イレブン・ジャパンだ。

鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者)の主導により、2009年秋から店舗での商品やサービスの大幅な見直しに着手して1年半、11年2月期決算の既存店売上高は消費不況下でも前年を上回る実績をあげ、前年並みか前年割れの競合他社との力の差を見せつけた。

キュレーションが今なぜ注目されるのか。それはどのように行われるのか。セブン-イレブンの取り組みを例に考え方やプロセスを追ってみたい。

ビジネスのあり方を「再定義」し「新しい意味」を見いだす

キュレーションの最初のステップは、これまでのビジネスのあり方を問い直し、意味を再定義することから始まる。セブン-イレブンが09年秋に着手した品揃えのキュレーションも、コンビニの本質を見つめ直し、「今の時代に求められる『近くて便利』」という新たな意味を見いだすところからスタートした。その経緯について鈴木氏が話す。

誕生から37年、「開いててよかった」から「近くて便利」へ刷新した。

【鈴木氏】日本初の本格的なコンビニエンスストアチェーンであるセブン-イレブンはもともと、初期のテレビCMの「開いててよかった」のコピーどおり、日本人の生活時間が広がっていくなかで、近くにあっていつでも開いている利便性を提供し、若い層を中心に強い支持を受けました。

それから30年以上経った今なぜ、「近くて便利」というコンセプトをまた追求したのか。

それは日本の生活環境やマーケットの変化を見すえ、自分たちはどのような顧客に対し、どのような商品やサービスを提供していくべきか、改めて問い直し、変化への対応を徹底するためでした。

日本は総人口が減少する一方で、少子高齢化や非婚化を背景に単身世帯は逆に増え、今後も一世帯あたりの人数はどんどん減っていきます。また、女性の就業率は年々高まり、60%近くに達しています。