価値の再編集などを意味する「キュレーション」というアメリカ生まれの概念が、ビジネス界で注目されている。総合デザインに佐藤可士和氏を迎えた新生セブン-イレブンを例に、この新時代の発想法を追った。

キュレーションは美術館や博物館で企画や展示を担当する専門職のキュレーターに由来する。例えば、美術館のキュレーターは既存の作品の意味を問い直し、選択し絞り込み、美術館というプラットホーム上でそれらを結びつけ、新しい意味や価値を伝える。

ITジャーナリストの佐々木俊尚氏は著書『キュレーションの時代』で、主にネット上でユーザー自身が情報のキュレーションを行っている動きを紹介したが、キュレーションの発想はリアルの世界でも広まっている。

一例をあげれば、アップル社のタブレットコンピュータiPadは「キュレーテッド・コンピューティング」と呼ばれる。

あれもこれもできる多機能のパソコンと異なり、DVDプレーヤーもなければ、CD焼き付けもできないが、つくり手によって機能が選択され絞られていることで、逆に使いやすさという新しい価値が提供された。

結果、iPadは既存のパソコンが入れなかった場面にも入り込み、高齢者など既存のノンユーザーにもIT利用を可能にし、新しい市場を生み出した。

また百貨店にかわり、洗練された商品を選んで集めて人気上昇中のセレクトショップもキュレーションの典型で、オーナーやスタッフはキュレーターに例えられたりする。

20世紀がつくり手側の発想で「より多くの価値」を追求する時代だったとすれば、21世紀に入った今、受け手側の視点でそれらを再編集し、「よりよい価値」を実現していくキュレーションの時代に入ろうとしている。