価値の再編集などを意味する「キュレーション」というアメリカ生まれの概念が、ビジネス界で注目されている。総合デザインに佐藤可士和氏を迎えた新生セブン-イレブンを例に、この新時代の発想法を追った。
「何でもあり」がウリの時代から、
編集力を問うキュレーションの時代へ
「近くて便利」をコンセプトにしたセブン-イレブンの品揃えのキュレーションは1年半後、成果となって表れた。11年2月期決算の既存店売上高は前年を上回る実績をあげ、同業他社をしのぐことができたのは前述したとおりだ。その数字を押し上げたのは、主に40歳以上の女性客の増加だった。
男女別客数の前年比を見ると、男性客は総じて前年並みだったのに対し、女性客は毎月105~110%で推移。ミールソリューションの意味が女性客に伝わり、新しい市場が生まれる可能性を予感させたのだ。
この成果は何を意味するのか。今なぜ、キュレーションの発想が必要なのか。鈴木氏が強調するのは自己変革の重要性だ。
【鈴木氏】イトーヨーカ堂のような総合スーパー(GMS)は、かつては食品も、衣料品も、家電製品も、何でも揃え、手ごろな値段で提供することに価値を感じてもらえました。今では専門店や量販店が次々生まれ、以前のような価値は薄れて、GMSの時代はどんどん終わろうとしています。業界各社が次々と経営破綻し、経営を維持したイオンとヨーカ堂の大手2社も成績が伸び悩んでいます。
百貨店も多彩な商品を扱う業態ですが、やはり業績は低迷し、業界の売り上げはこの10年間で約10兆円から約7兆円にまで縮小しました。どの百貨店も同じ取引業者が同じような商品を持ってきて陳列し、店側は単なる場所貸しになっている。差別性がなく、以前のような価値がなくなっているのです。