なぜ、世の中の変化についていけないのか。例えていえば、人間は自分の体臭が自分ではわかりません。同じことは仕事のやり方についてもいえます。自分の体臭のなかに浸って仕事をしていると、変化に対応できていない現実になかなか気づかない。それは創業以来、市場の変化に対応しようとしてきたセブン-イレブンについても同じで、私は常に危機感を抱いています。

セブン&アイホールディングス代表取締役会長兼CEO 
鈴木敏文氏

確かにみんな一生懸命やっています。ただ、自分たちの差別性がどこにあるか、これも体臭と同じで、自分ではわかりにくいところがあります。そのため、うっかりすると、過去の延長線上で考えてしまう。ひとたび、自分の体臭のなかに浸ったら、変化においていかれるのは必定です。

今回、セブン-イレブンのあり方を改めて定義づけ、品揃えの照準を絞り込み、全体感を持ったアピールの仕方で価値を伝えるというブランディングプロジェクトを実行したのは、仕事の仕方に刺激を与え、自らを革新するためでした。

百貨店も自主開発商品で専門店にない上質感やこだわり感を打ち出し、明確なコンセプトのもとで売り場を自己編集していけば、顧客の支持を回復できるはずです。

何でも揃っていることに価値があるのではなく、自分たちで編集してブランドの価値を生み出し、的確なコミュニケーションで伝えていく。その繰り返しによって、自己革新を続けなければならない時代になっているのです。

セブン&アイホールディングス代表取締役会長兼CEO 鈴木敏文(すずき・としふみ)
1932年生まれ。中央大学卒。62年イトーヨーカ堂入社、73年ヨークセブン(現セブン-イレブン・ジャパン)設立。92年より現職。
(岡倉禎志=撮影)
【関連記事】
鈴木敏文「キュレーション」で顧客心理を掴む【3】
「想定外に非合理」な顧客心理をつかむために -セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO 鈴木敏文氏
顧客心理分析「売り手の怠慢!安ければ売れる」のウソ【1】
鈴木敏文「私は『あがり症』だからこそ、成功できた」【1】
鈴木敏文流「疲れさせず、退屈させない営業話法」【1】