日本の場合は不良債権の多くが銀行の貸付債権だったのでなんとか査定することができましたが、米国の場合は証券化によって多様な資産が多様な経済主体によって持たれているので、資産査定が技術的にたいへん難しいのです。これをどう解決するかがガイトナーとサマーズの重要な仕事になってきます。
マクロ経済の悪化に対しては、世界中でやむをえず財政拡大が行われています。しかし、いまのような変動相場制をとるオープン・エコノミーにおいては、財政政策は効果が少ないというのがマンデル以降の経済学の常識です。各国政府はそれを承知で財政出動に頼っていますが、やりすぎは危険です。なにより財政拡大は長くは続けられません。
その意味で注目しているのは、米国の自動車大手3社、ビッグ3の救済問題です。もし米政府が対応を誤れば、米経済の活力は根本的に損なわれてしまいます。
最良の策は「管理された倒産」です。倒産させるといっても清算するのではなく、無駄な部分を切り落とし、競争力のあるコア・ビジネスだけを残して「再生」するのです。この再生プロセスを秩序ある形で混乱なくやらなければならない。それには、バブル崩壊後の日本が産業再生機構を使って成し遂げたことが参考になるでしょう。
産業再生機構で活躍した冨山和彦や斉藤惇などの専門家を集めてチームをつくり、ワシントンへ派遣する。そしてサマーズNEC委員長と議論させる。私はそれが、日本にできる最大の知的貢献だと思います。