オバマ政権はどんな経済対策を打つべきか
未曾有の経済危機が進行するなか、米国ではバラク・オバマ大統領が就任しました。政権のスタートにあたって私が注目したのは、主要な経済スタッフの顔ぶれです。結論をいうと、大統領は考えうるベストの陣を敷いたと思います。
まず財務長官には、若手ながらニューヨーク連銀総裁として実績を積んでいるティモシー・ガイトナーを任命しました。日本の金融危機克服プロセスにも詳しく、当局者としては証券大手ベアー・スターンズや保険最大手AIGの救済に動くなど行動力を示しました。2月にガイトナー長官が打ち出した経済政策は目新しさがなくインパクトに欠けるといわれましたが、私の見るところ方向性は決して間違っていません。
また経済政策立案について大統領へマクロ的な観点からサポートする国家経済会議(NEC)委員長には、クリントン政権の財務長官だったローレンス・サマーズを任命しました。サマーズは私の友人でもありますが、大統領はたいへん信頼できる人物を選んだと思います。
日本ではあまり注目されていませんが、実はもう一人、重要な人事が行われています。それは大統領経済諮問委員会(CEA)委員長に、カリフォルニア大学バークレー校教授で女性エコノミストのクリスティーナ・ローマーを任命したことです。
ローマーは大恐慌研究の世界的な権威です。FRBのバーナンキ議長も大恐慌の研究者ですから、オバマ大統領は自分の身近に、大恐慌の金融面での世界的な研究者を二人も置いたことになります。
彼らが当面やるべきことは金融の混乱を収めることと、マクロ経済の悪化を止めることです。金融の混乱を収めるためには、政府や中央銀行が公的資金注入を含め、なりふりかまわず行動しなければなりません。
公的資金の注入については、日本の成功体験を伝えるべきだという声もありますが、現実には次のような問題があったことを指摘したいと思います。
99年の公的資金注入後も日本の金融危機は収束しませんでした。不良債権の総額が不明で、危機の「底」が見えなかったからです。いまの米国も不良債権額を確定できていません。