「小泉・竹中」政策で本当に格差を生んだのか
私のことを「市場原理主義者」と批判する人がいるのは承知しています。しかし「原理主義者」と決め付けられればどんな人でも悪者になります。私が市場原理主義者なら、市場がすべてを解決すると信じ込んでいることになるでしょう。そんなことはありえません。
たとえば私は小泉純一郎内閣の金融担当大臣として、金融危機の沈静化につとめました。そのときにやったのは規制の強化です。銀行への規制やルールを強化したから、不良債権処理ができたのです。
「小泉・竹中は規制緩和一辺倒の市場原理主義だった」と決め付ける人がいますが、それは議論の出発点から間違っていることになります。
そもそも政策について、白と黒に単純化した議論はできません。政策はきわめて現実的で灰色です。だから「われわれは新自由主義だからこの政策を採りましょう」というようなことは現実にはありえない。政策と思想とは違うのです。
最近は「格差が生じたのは竹中のせいだ」ともいわれています。まず事実としてジニ係数の推移を見てみましょう。所得の不平等さを測るジニ係数は80年代から90年代にかけて上昇し、とくに90年代に入ってから世界的に上昇しています。
それはグローバリゼーションとIT革命によってビジネスのフロンティアが現れたから、頑張って高い所得を得る人が出てきたということです。
しかし日本では00年代に入ってからジニ係数の上昇は鈍化しています。経済がよくなって失業者が減ったからです。小泉内閣が成立したのは01年で、私は02年に金融担当大臣に任じられました。これだけを見ても、無茶な論法であることがわかると思います。