「科学的思考」が健やかな未来を築く
私たちは、科学の進歩によって「三た論法」による誤解を避けるための方法を手に入れました。前後関係だけで因果関係を断定するのではなく、適切な比較やデータに基づく検証を重ねることで、治療や予防策の本当の価値を見極めることができるのです。
それなのに、いまだに「三た論法」が世の中に悪影響を与えています。例えば、HPVワクチンの積極的勧奨が約8年も差し控えられたために、将来、子宮頸がんによって亡くなる女性が5000人も増えるという推計があります。HPVワクチンを接種していれば避けられたことなので、残念だという感想では済みません。
日本と同様にデンマークやアイルランドなどの他国でも、HPVワクチンに否定的な報道などの影響で接種率が一時的に下がった時期はありますが、保健当局のすばやい対応により接種率は速やかに回復しました。一時的な差し控えは仕方ないにせよ、積極的勧奨の再開まで8年間という長い時間がかかったことは大きな問題です。
医療現場ではもちろんのこと、私たち一人ひとりが健康に関する情報を受け取る際にも、こうした視点を持つことが重要です。「三た論法」に惑わされるのではなく、「科学的思考」を行うことで、より健やかな未来を築きましょう。