性被害によるPTSDは性別に関係なく存在する

これまで笑い話にされたり「ないこと」にされたり、とかく軽視されてきた男児の性被害の扱いが、いま転換期を迎えています。小児性被害は「子どもが脆弱性を利用され、被害に遭う」ことを軸に考えるべきで、そこに性別は関係ありません。被害後の影響については、性被害に遭った子どもが発症するPTSDに、男女差があるかを調査した28個の研究を、複合的に検証した論文があります。そこでは性被害とPTSDの関連性は「性別に関係なく」存在すると結論づけられています(*4)

*4:「Sexual abuse and post-traumatic stress disorder in childhood, adolescence and young adulthood: a systematic review and meta-analysis」Boumpa V, et al. Eur Child Adolesc Psychiatry 2024;33(6):1653-1673.

男児の性被害への対策は、女児のそれ以上に遅れていると思います。「男の子なら大丈夫」という考えが、子どもを危険にさらしかねないことを、まずは保護者と、子どもに接する職業の人たちに知ってほしいです。

男児を守るためのキーマンは父親

小児性被害の予防に関して、男児にかぎっていうと、家庭ではお父さんがキーマンになるでしょう。

今西洋介『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害』(集英社インターナショナル)

女性の保護者の多くは、すでに高い危機管理能力をもっています。それは悲しいことに、それまでの人生でお母さんたちのほとんどが大小何らかの性被害に遭ったり、危ない思いをしたり、性被害に遭わないために気をつけるよう教えられたりしてきたからです。

「男の子だから大丈夫」という理由で、外出先でひとりでトイレに行かせたり、銭湯にひとりで入らせたりといったことは避けるべきです。

もちろん、家族だけでそれをするのは限界があります。SNSで、小学校低学年の男児を子育て中のシングルマザーが、「銭湯や温泉で、息子をひとりで男湯に行かせられない」と嘆いているのを見ました。親の目が届かないところでも、周りにいる大人が目を光らせ、子どもを見守っていれば、加害者は子どもに近づけないし、行動に移せません。

“自衛”は強いてはいけないものであると同時に、限界があります。社会全体で子どもを守っていくべきです。

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