「認知機能の衰え」も助長する
さらに骨粗しょう症は、認知機能の衰えも助長します。慈恵医大の神経内科との共同研究では、パーキンソン病の患者さんで骨質マーカー(骨質の劣化を測る値)の数値が悪いと、認知機能が悪くなってしまうことがわかっています。
パーキンソン病とは、「からだのふるえ」「動作がゆっくりになる」「筋肉がこわばり手足が動かしにくくなる」「転びやすくなる」などといった症状を特徴とする病気で、脳の指令を伝えるドーパミンと呼ばれる物質が減ることによって起こります。
通常、パーキンソン病は、認知機能には影響されないとされていますが、こと骨質の劣化があるパーキンソン病の患者さんには、認知機能の低下が認められるデータがあるのです。
まさに、骨粗しょう症は万病に関係しているわけです。健康長寿を楽しむために、骨粗しょう症を予防し、治療することの大切さをご理解いただければ幸いです。
骨折した男性の死亡率は女性の3~4倍に
骨粗しょう症というと、「60代以上の女性は気を付けて」と言われてきましたが、決して女性だけの病気ではありません。男女関係なく、50歳以降は性ホルモンが減少します。この性ホルモンの減少が骨密度とコラーゲンの老化に拍車をかけてしまうわけですから、男女ともに、ご自分ごととして問題意識を持っていただく必要があります。
骨粗しょう症の一番の原因は性ホルモンの減少で、女性では閉経、男性では壮年期以降にリスクが高まります。
男性の骨粗しょう症の場合、骨質劣化型の骨粗しょう症になりやすいということがわかっていて、男性が高齢で骨折すると、女性よりも3~4倍も死亡率が高いという報告があります。
女性は骨密度が若い人の値の70%を切ったあたりから骨折しやすくなるのに比べ、男性は80%を切るとその危険があるのです。その理由は、男性は女性よりも酸化ストレスの影響を受けやすいため、骨質が悪くなりやすいのではないかと考えられています。
それなのに、ほとんどの男性は骨粗しょう症を女性の病気と決めつけているのも問題です。大型犬の散歩中、ひっぱられて転倒しただけで骨折したり、風呂で足元がよろめいて浴槽にからだをぶつけたりなどといった、ささいなことで骨折してしまった場合には、十分に骨粗しょう症を疑う必要があります。