がん、脳血管疾患、心疾患は三大疾病と呼ばれている。東京慈恵会医科大学の斎藤充教授は「健康に自信がある人でも、年をとって骨が強くなる人は一人もいない。骨の強さを維持しないと、認知症や動脈硬化、心臓疾患を合併するリスクが高まる」という――。

※本稿は、斎藤充『100年骨』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

膝の痛み
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「骨粗しょう症」は万病にかかわる病気

骨の強度が衰え、もろくなるのが「骨粗しょう症」です。

ですが、骨粗しょう症は骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気──という説明は、あまりにもざっくりしています。というのも、骨粗しょう症は単に骨折しやすくなるだけでなく、万病にかかわる病気だからです。人生全般にダメージを及ぼします。

たとえば、高齢者の骨折は、寝たきりや要介護状態を招き、健康寿命を縮める大きな要因になります。

特に足の付け根(大腿骨頚部だいたいこつけいぶ)や手首、背中、肩などの骨を骨折すると、立つことや歩くことができなくなり、要介護や寝たきりになる危険性が高まります。

厚生労働省の調査によると、「65歳以上の方が要介護者となった主な原因」は、運動器の障害(「転倒・骨折」「関節疾患」)が「認知症」や「脳血管疾患」、「高齢による衰弱」を抜いて最も多く、女性に限れば、運動器の障害は全体の約3割を占めています。

小さな骨折で腰が徐々に曲がっていく

昔と違い、昨今の65歳は若々しく、趣味や仕事など、まだまだ活発に動き回れる年齢ですよね。それなのに、骨折によって一気に老化が進んでしまうというのは、ご本人にとっても家族にとってもショックな事態でしょう。

背骨の骨折では腰が曲がることがあり、曲がっている箇所周辺の筋肉が緊張して痛みが生じます。痛みや腰の曲がりはからだの動きを制限してしまうため、着替えにくい、歩きにくいなど、日常生活でのさまざまな動作(「ADL」と言います)の低下を招きます。足の付け根を骨折すれば、歩行が困難になり、寝たきり、引きこもり状態を招き、その結果、筋肉量が減少したり筋力が低下したりする「サルコペニア」にもつながります。

また、最近の研究から、骨粗しょう症の患者さんは動脈硬化や心臓疾患などを合併しやすいことがわかっています。

動脈硬化、高血圧、糖尿病、腎機能障害(CKD)、慢性肺疾患(COPD)といった生活習慣病を患っている方は、骨のコラーゲンが過剰に老化する「骨質劣化型の骨粗しょう症」となり、骨折する危険性が高いことも明らかになりました。